アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
嫌な記憶
-
※
制服の下はいつも痣だらけだった。夏でも長袖で隠さなければならなかった。奴らは顔を狙わない。いつだってそうだ。
「ほら、早く舐めろよ」
汚れたトイレの床に這いつくばって、爽太(そうた)はきつく奥歯を噛み締める。声を出せばもっとひどい目に遭わされると分かっていた。だから声を殺し、息を詰めてこの時間をやり過ごすしかない。
それに、どうせ大声を出したところで、誰も助けてはくれないのだ。縋る手など、この世にはない。
腹に鋭い蹴りを食らい、吐き気を堪えて身体を小さく折りたたむ。下卑た嘲笑が降り注ぐのを、どこか他人事のように感じていた。
床を舐めさせられるのも、便器の水を飲まされるのも、もうとっく慣れてしまったようだ。そうでもしなければ壊れてしまう。
屈辱と恐怖の日々がゆっくりと精神をすり減らし、いつしか感情というものを忘れてしまった。泣くことも、笑うことも、怒ることすら忘れた。
早く終わって欲しい。こんな人生なんか、もういらない。十四歳の爽太はただそれだけを願っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 19