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興味深い香り
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「現代文の代理の…神田先生だっけ?」
俺の目の前の席に座り、落ち着きなく足をぶらぶらさせたり、きょろきょろと周りを見渡しながら、想汰が口を開いた。
一緒にいるこいつ、犬養 想汰(いぬかい そうた)は、間違いなくβだ。
茶色でふわふわのくせっ毛は、猫を思わせる。
瞳が大きく、可愛い顔立ちのせいで、その顔は童顔だ。
近衛の名に、臆するかと思ったが、こいつは俺も同じβだと思っているようだった。
ただ時折、俺の鼻を擽る想汰の匂いは、Ωに近い気がした。
かといって、どうにかしようとも思わないし、こいつとどうにかなろうとも思ってはいない。
俺は、ただ穏やかな学校生活を送りたいだけだ。
「なんか綺麗な先生だったなぁ」
先程まで授業をしていた神田の姿を思い出すように、想汰は、視線を游がせた。
産休教師の代わりに俺のクラスの現代文を教えに来た神田。
纏う雰囲気に、直ぐにΩなのだと感じた。
微かに香った神田のフェロモンに、俺の身体の芯が震えた。
[運命の番]とやらに会ったとき、本能でわかると聞く……。
あいつが、俺の[運命の番]……なのか?
「犬養、課題ノートは?」
学級委員が、クラス分のノートを抱えながら、想汰に声をかけた。
「ぬぁ! もう少し、もう少し待って!」
変な声を放った想汰は、慌てて腰を上げ、自席に走っていった。
「ほんと、あとちょっと、ほんのちょっとで終わるからっ」
鞄から取り出したノートを忙しなく開いた想汰は、んーっと悩ましい呻き声を上げながら、机に噛りつく。
「やだよ。待ちたくねぇ」
これから遊びにいくのに…と、不満げな声を上げる学級委員。
俺は、徐に立ち上がり、学級委員の腕の中から、ノートを持ち上げた。
「俺、持ってくよ」
学級委員は、俺の行動に驚いたような瞳を向ける。
「ぁ、そう? ありがとう」
柔らかな笑顔を見せる俺に、学級委員は、硬めの笑みを浮かべた。
神田が[運命の番]なのか近くで確かめてみたくなった。
このノートの提出を口実に、もう少し近くで、神田の香りを嗅いでみたくなっていた…。
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