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極秘事項
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一頻りじゃれた後、想汰が再び、口を開いた。
「……図書準備室、行ったから?」
きゅっと眉根を寄せ、不安そうに言葉を放つ想汰に、俺は、んーとはっきりしない音を返す。
「九良先生……は、違うよね」
なんで九良の名前が出てくるのかと思った。
あの場所に充満していたのは、Ωの発情期独特のフェロモンだ。
でも、…確かに、あった。
αの……九良の、獣染みた匂いが。
鼻奥に蘇る、胸糞の悪い匂い。
「ぁあ。九良は、俺と同じ……αだよ」
俺は、顔を顰めながら、声を放った。
「やっぱりかぁ。なんかすげぇ魅力的だったんだよ。惹きつけられるっていうか……カリスマってやつかなぁ~」
夢見る少女のように宙を見つめ、ぼんやりと話していた想汰は、言葉を切り、何かに気づいたような驚いた顔で、俺を見やる。
「てか、先生だよ、呼び捨てしちゃダメでしょっ」
慌てたように周りを見回す想汰に、フッと鼻で笑ってしまう。
九良とは、生徒と教師という関係ではなく、面識があった。
九良家自体も、近衛家と並ぶほどの名家だ。
ただ、近衛家ほど、αに執着してはいない。
九良の姉…儚(はかな)は、Ωだった。
俺は、儚との間に、子供を持っていた。
騙し討ちのように近づいた儚のフェロモンに、俺は、屈服させられた。
俺がαだと判明したその年に、儚の策略により、関係を持ってしまった……。
子を孕んだ儚は行方を眩ませ、近衛家を翻弄した。
儚を巡るいざこざで、近衛家に交渉に来たのが九良だった。
その際、既に子供が生まれているコトを理由に、近衛家には迷惑をかけないと…番になれとも言わないし結婚も求めない、認知も養育も求めないものとし、儚を探さず、制裁等を加えないことを約諾させた。
「九良の甥……俺の子供」
さらりと放った言葉に想汰は、目を真ん丸にし、動きを止めた。
握り潰したくても叶わなかったのは、この件くらいだろう。
「つっても、俺に責任もなんもねぇし……」
…なんの愛情も、湧かない。
本能だけで行った繁殖に、心は、ついていかなかった。
「話はついてるし、極秘事項だからな」
きゅっと眉根を寄せ睨むような瞳を向ける俺に、想汰は、捥げそうなほどに頭を縦に振る。
「ぉふ………」
自分でやったヘットバンキングに、想汰は口許を押さえた。
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