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肌を焼く吐息 < Side近衛
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黒板に書き出すチョークの文字。
カツカツと一定のリズムを刻む。
今日は、微かにすら神田のフェロモンの香りが届かない。
たぶん、抑制剤で押さえ込んでいるのだろう。
黒板に書かれた文字をノートへと写していく。
カツカツと鳴っていた黒板に文字を書く音が止まり、キィーっと、脳に響く不快音の後、どさっと物が落ちるような音がした。
ほんの数秒の間に鳴った一連の音。
ばっと顔を上げた。
黒板には白い線が、床に向かって伸びている。
黒板の前、少し高くなった教壇の上で、神田が倒れ込んでいた。
「神田センセ?!!」
驚き声を上げたのは、想汰だった。
教壇の真ん前の座席から、腰を上げた想汰は、駆け寄りその身体を抱き上げる。
他の生徒たちは、驚きに、動きを止めていた。
想汰が抱え上げるその身体は、全くと言っていいほど、力が入っていない。
俺も慌て、駆け寄った。
「先生?!」
ぐったりと想汰の腕から垂れ下がる頭。
頬を両手で挟み、覗き込むその顔は、青を通り越して、真っ白に見える。
小さく、本当に小さく吐かれた神田の息が、指先にかかる。
肌に微かに掠っただけなのに、その場所から、ビリビリとした痺れが走り、まるで焼け焦げていくかのような痛みを残した。
それは、濃縮されたフェロモンの塊。
俺は、反射的に、神田から身体を離した。
振り返り、学級委員に声を放つ。
「誰でもいいっ、先生呼んで来いっ!」
普段は目立たぬように、大人しく過ごしている俺の怒声に、委員長は、弾かれたように教室を飛び出していった。
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