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執着の違い
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学級委員が呼んできたのは、九良だった。
九良が、教室に足を踏み入れた瞬間に、心臓が、ばくんっと大きな音を立てた。
じわじわと奥底から沸き上がってくるのは、この男に対する怒りの感情だった。
九良に対する怒りで、思い当たるのは、儚ぐらいだ。
でも、儚のコトは既にケリが着いている。
もう、何も気にしていなかった。
なのに、意味もなく、胸の奥が怒りに熱くなる。
神田を横抱きにした九良の視線が、俺を捉える。
「お前も来い」
掛けられた声に、殴りかかりたいほどの衝動が、心を埋め尽くす。
暴れだしそうな怒りを、奥歯を噛み締め、磨り潰した。
「他は自習。騒ぐなよ、いいな?」
他の生徒へと声を放った九良は、神田を抱きかかえたまま、ゆるりと教室を後にした。
保健室へと神田を運び寝かせた九良は、ベッドの近くにあったパイプ椅子を引き寄せ、腰を下ろした。
俺は、数歩離れた場所にある養護教員用の椅子に、どかりと座る。
「お前のせいだったのか」
声を零す九良に、訝しげに、眉根を寄せた。
真っ白な顔色のまま、ベッドの上に横たわる神田の髪を寄せながら、声だけを俺に向けた。
神田に触れるその手は、愛おしい者でも愛でるかのような動きを見せる。
その仕草すら、俺の心を煮え滾らせた。
今すぐにでも、九良に殴りかかりたい。
ぼこぼこに打ちのめし、神田を自分の手の中に収めてしまいたいという衝動に駆られる。
「お前、こいつの[運命の番]だわ」
放たれた言葉の意味が一瞬、理解できなかった。
「お前、俺のコト、殺したいくらい憎いだろ? 儚と離されたときには、そんな風に感じなかっただろ?」
儚には、何の執着も感じなかった。
ただ、本能のままに、欲のままに、抱いただけだった。
傍に居たいとも、守りたいとも、自分のものにしてしまいとも、微塵も感じていなかった。
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