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怒りじゃなくて、愛を
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Ωなんて、αの子種が、欲しいだけ。
楽になれるなら、相手など誰でもいい。
俺じゃなくても…、優秀な個体なら、誰だっていいんだろ。
「はしたなくて、下劣で、孕むだけの生きもんか?」
寂しそうに、哀しげに紡がれる九良の声。
「…Ωには、心がないって思ってんのか?」
幸せも、哀しさも、楽しさも、悔しさも、何も感じない生き物だとでも思っているのか? と、九良は、険しい顔で俺に詰め寄る。
俺は、九良の顔を睨みつけたまま、唇を噛みしめていた。
「儚は、お前の母親の[運命の番]なんだよ……」
九良の言葉に、俺は、瞳を開いた。
「だから、お前の……、お前の母親の遺伝子が欲しかったんだ。だから、お前を…嵌めた」
それは、許されることじゃないかもしれない。
でも、儚も必死だったのだと、九良の瞳は慈悲を求めた。
九良が語った事柄に、俺は、言葉を発することが出来なかった。
言葉を失っている俺に、九良は、神田の顔に視線を向ける。
「こいつだって、人間なんだ。何も感じないわけ、ないだろ……」
呆れたように、諦めたように、九良は、腹立たしげに言葉を繋ぐ。
「虐げられて、発情期の間中、生きているのさえ辛くて、普通に生活したいだけなのに、自分自身が、その身が恥ずかしい物のようにさえ感じる」
負い目だけが、背中に降り積もっていく。
「番に出会えないΩは、ずっとずっと何のために自分が存在するのかわからない。不安の中で、ただ生きてるんだ」
何も感じないわけじゃなく、感じたくないから、視線を、心を遠くへと逃がす。
苦しい思いに、蓋をする。
「俺に怒りぶつける前に、こいつにちゃんと愛、ぶつけてやれや。……お前は俺のためにここに居るんだって、教えてやれよ」
ゆるりと椅子から立ち上がり、俺の髪を掻き上げ視線合わせた九良は、真摯に諭すように言葉を紡いだ。
ずっしりと重たい言葉が、俺の胸の底へと沈んでいく。
じっと見やる九良の瞳に、俺も同じ熱量で視線を返す。
俺の態度に納得したのか、九良は、重く張り詰めた空気を一新する。
「オレ、職員室戻るわ」
鍵かけろよ…と、言葉を残し、九良は保健室を後にした。
九良が出ていったその扉にゆったりと近づき、重い音を立て、錠をかけた。
横になる神田の元に戻り、艶めく唇に指先を当てた。
びりびりと痺れるような感覚は、指先から全身へと広がっていく。
抑制薬を摂取していても、漏れるフェロモンは、俺を誘惑…、発情させる。
[運命の番]である俺には、神田のフェロモンは、微量であろうと麻薬と一緒だ。
堪らない衝動に、俺はその唇にキスを落とす。
突き抜けるような快感が、身体中を犯していった。
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