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照れより歓喜 < Side九良
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保健室を出たオレの視界に飛び込んできたのは、少し離れたところで、うろちょろする犬養の姿だった。
「こら」
こちらに背を向けている小さな犬養に近づき、頭をガシッと掴む。
「ゎっ」
慌てたように肩をびくりと跳ね上げた犬養は、頭を掴まれたままに、オレを仰ぎ見た。
まだ、授業時間中の廊下は、しん…と静まり返っている。
「自習って言ったろうが?」
「ぁ、あの………すいません」
小声で問うオレに、叱られた犬さながらにしょぼんと肩を落とし、身体をこちらへと向ける犬養。
「なに? ここで、盗み聞きでもするつもり? 2人のセックス」
にたりと笑ってやれば、犬養は、一瞬のブランクのあと、ぼぼっと頬を赤く染めた。
「いやいやいやいや……」
大声を発した犬養は、身体の前で盛大に両手を振る。
「しーっ」
声の大きさに、思わず、唇の前で指を立てた。
はっとした犬養は、両手で口を塞ぐ。
きょろきょろと周りを見回した犬養は、そっと口許から手を離すと、不安げな瞳をオレに向けた。
「心配、だったんで。神田先生も、たかっ…近衛くんのコトも」
顔は赤いまま、犬養は困ったように、オレを見やる。
少しの沈黙を挟み、犬養は、閃いた顔をした。
「2人のセックスってことは、うまくいったんですか? やっぱり、運命だったんですか?!」
先程は、その"セックス"という単語を聞き赤面していたのに、今度は、するりと口から放つ。
近衛が運命の相手に出会えたという事柄に、テンションが上がり、恥ずかしさを凌駕したようだ。
「あぁ。そうだな」
鼻息荒く、キラキラした瞳でオレを見上げる犬養に、思わず気圧される。
大人しくさせる気力も、その勢いに、削ぎ剥がされる。
両手を握りしめ、ぐっと背を丸める犬養は、ふるふると身体を震わせた。
「良かったぁ~」
言葉と共に、大きく息を吐いた犬養は、嬉しそうに、身体を弛緩させ、笑みを零した。
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