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それでいいんじゃねぇの? < Side犬養
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なんで俺は、βなんだろう。
どんなに蔑まれたとしても。
どんなに虐げられたとしても。
どんなに生きにくくても。
俺は、Ωとして産まれ、先生と番になりたかったな。
たぶん、一目惚れなんだ。
別に、すごく優しくされたわけでもなくて。
別に、すごくカッコいいところを見たわけでもなくて。
でも、何だか胸の奥が、ザワザワした。
神田先生を抱き上げた姿を見て、あの腕の中に居るのが、俺だったら良かったのにって、思ってた。
……でも、俺はβで。
先生の[運命の番]じゃない。
“好きだ”と実感した途端、その想いは、むくむくと沸き上がり、心のコップからぼこぼこと溢れだした。
溢れた俺の想いは、涙に変わり、瞳からボロボロと滴り落ちた。
俯き、溢れる涙を抑えられない俺の頬に、先生の武骨な指先が触れた。
じわっと広がるその感触は、胸の奥をドキドキさせるのに、この手を掴んでいいのは俺じゃない。
優しく俺の頬をなぞった指を伝い、溢れた涙は、先生の手を濡らす。
「番も…子供も、いらねぇよ」
ゆらゆらと揺らぐ涙の先。
ぼやける視界で、見上げた先生は、困ったような笑顔を見せる。
「オレは、お前が傍に居ればいい」
嬉しいはずなのに。
幸せなはずなのに。
言い切られる言葉に、後ろめたさが、心を侵食する。
「でも………」
続く言葉が見つからずに、下唇を強く噛み込んだ。
「オレも、お前も、お互いがお互いを好きなら、それでいいんじゃねぇの?」
血の滲む唇に、先生のそれが重なる。
ちろりと舐められた唇は、傷口がチリチリと痛んだ。
その痛みが、胸の奥を焦がしていく。
「オレの傍に居ろよ、な?」
チュッチュッと小さく、何度となく啄まれる唇。
チリチリとした痛みは、じんわりとした温もりに変わる。
涙を堪えながら、先生を見上げた。
傍にいてもいいの?
声にならない想いに、俺の瞳が揺れる。
「お前が嫌だっていっても、放さないコトに決めたわ」
先生の腕が、壁と同化する俺の身体を引き起こし、グッと引き寄せられた。
「関係ねぇ。お前が男でも、βでも、なんでも。犬養は、犬養だろ。オレが好きだって、守ってやりてぇって思うのは、お前だけだわ」
俺の髪に鼻先を埋めた先生は、胸一杯に息を吸い込む。
「明確な証がなくたって、お前はオレのもんだよ」
誰にもやらねぇ…、呟いた先生は、なんの意味も持たないままに、俺の頸に噛みついた。
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