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犬養らしくない
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近衛と中途半端な関係になり、数日が過ぎていた。
教卓の目の前。
いつもなら、真面目に板書している犬養が、机に突っ伏して居眠りしていた。
ありえない行為だ。
授業終わりのチャイムの音が、教室に響く。
生徒たちは、ランチタイムの始まりに、そわそわとし始める。
「今日はここまで」
僕の声に、びくりとなった犬養は、控え目に視線を漂わせた。
ぱたんと教科書を閉じ、小声で犬養に声を掛ける。
「どうした? 具合悪いのか?」
「…ぁっ、すいません」
ぼんやりとした瞳で僕を見やった犬養は、困ったように眉を下げた。
嫌な予感がした。
向けた視線の先、近衛は口許を手で覆い、細かく首を横に振るった。
「これ、運んでくれるかな?」
授業で使った資料の入ったケースを犬養に差し出す。
「居眠り、見なかったことにするから」
ぼそりと付け足した僕の言葉に、犬養は、ゆったりと腰を上げた。
僕の横を、とぼとぼとついてくる犬養は、頻りに首を傾げる。
「身体が怠い。ぼんやりする。頭が働いていない気がする……身体が、熱い」
言葉を連ねる僕に、犬養は、驚いたような瞳を見せる。
「なんで、わかるんですか?」
不思議そうに僕を見やる犬養に、予想が的中しているであろうコトに、肩を落とした。
近衛のあの仕草も、予想を裏付けていた。
図書準備室の前に着き、犬養を中へと誘った。
僕のデスクの横の椅子を引く。
犬養を横向きに座らせ、向かい合うように僕も腰を下ろした。
「落ち込まないで聞いてね。たぶんだけど、犬養くんの第2の性別、Ωになってると思う」
犬養の些細な変化にも気づけるように注意しながら、言葉を紡いだ。
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