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掏り替え誤魔化す
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犬養の横を通りすぎた近衛は、僕を後ろから抱き締めた。
「ちょっ…、何…っ」
慌てる僕の首筋に、近衛は、鼻先を擦りつけた。
近衛の頭を離そうと押してみるが、微塵も動じない。
「犬養くんが、見てるだろっ。やめなさいっ」
目の前の犬養は、両手で、形ばかりの目隠しをしていた。
指の隙間から、がっつりこちらを覗いている犬養の瞳は、好奇と羞恥が入り交じる。
「想汰は俺とおまえの関係、知ってるから」
淡々と話す近衛の息は、微熱を纏い、僕の首筋を擽る。
「そういう問題じゃ……」
「浮気防止だから」
その声は、僕に、逆らうことを許さない。
近衛は、犬養のフェロモンに流されそうになる身体を、必死に食い止めているようだった。
「我慢、我慢」
呟かれた近衛の言葉は、色々な想いを背負っていた。
抱きたい。
吐き出したい。
この犬養のフェロモンに、屈してしまいたい。
そんな本能を、僕への気持ちへと掏り替える。
噛みつきたい。
番になりたい。
自分のものにしてしまいたい。
そんな欲望を必死に封じ、擦り寄るコトで誤魔化している。
我慢というその単語は、まるで、近衛自身に放たれたかのようだった。
俺がこんなに堪えているのだから、おまえも多少の恥ずかしさには、目を瞑れと言われている気分だ。
必死に足掻く近衛に、僕はそれ以上何も言えない。
近衛の挙動を窘めるコトを諦め、口を開いた。
「強めのフェロモン……、今までなかった発情期が急に始まったせいもあるかもね」
犬養は、多少の免疫がついたのか、顔を覆っていた手を離し、右手で頸に触れる。
「あ………」
何かを思い出したように、声を零した犬養に、瞳を向けた。
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