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「あ、あのさ」
にやにやする近衛と赤面する僕に、犬養は申し訳なさそうに口を開いた。
気後れぎみに、近衛と僕を見やる犬養に、瞳を向ける。
「内緒にして?」
犬養の言葉に、僕も近衛も、疑問符を浮かべた。
「なんか、まだ、その、実感…湧かないっていうか、自分もわかってないっていうか……」
困ったように瞳を游がせる犬養。
ここから先は、九良と犬養の話であり、僕たちが口を挟むことではない。
「あぁ。それは、犬養くんのタイミングで良いと思うよ。身体のコトとか、…何かあったら、相談は乗れると思う」
柔らかく笑む僕に、犬養は、ほっとしたように笑顔を浮かべた。
「でも、傍に寄ったら直ぐバレるぞ? 九良、鋭いからな。たぶん、おまえたち[運命の番]だろうし……」
きゅっと眉根を寄せ、無駄だというように言葉を紡ぐ近衛。
傍に寄り、噛みつかれ、Ωとして目覚めたコトを考えると、九良と犬養は[運命の番]であろうと推測される。
「ん。わかってる……」
肩を落とした犬養は、何かを考えているように、瞳をきょろきょろと、彷徨わせていた。
抑制剤の効果が現れたのか、犬養の表情からぼんやりとした感じが抜けていた。
近衛もあまり、周りを気にしている素振りがない。
「もう、平気かな?」
調子の戻った犬養は、口角を上げ、首を縦に振る。
「間違いはないと思うけど、もう一度、検査、受けてきた方がいいかもね。さっきの抑制剤、僕に合わせて調合されてるものだから。もっと他に、犬養くんに合う薬があるかもしれないし」
僕の言葉に、犬養は、こくりと頷く。
「わかりました。今日、母さんに話して、行ってきます」
ふぅっと小さく息を吐いた犬養が、席を立った。
「想汰、先戻ってて……」
ぼそりと声を放った近衛は、犬養に触れていたその手で、追い払うような動作をする。
空気を読んだ犬養は、慌てたように、図書準備室を後にした。
「やっぱ俺、待てねぇよ」
犬養が出ていった扉を見ていた僕の首筋に、近衛は、小さくキスを落とした。
「おまえのコトも心配だけど、……俺も心配」
それは、犬養のフェロモンに負けそうになった自分の弱さが紡いだ言葉なのだろう。
「裏切りたくねぇ」
自分自身の不甲斐なさに、惑わされそうになる身体に、悔しくなる。
こいつだと決めた存在がありながらも、本能はフェロモンの誘惑に、抗えない。
将来の未確定な裏切りが怖くて、近衛は、酷く哀しい顔をする。
近衛のそんな顔を見たくもないし、させたくもない。
「わかった。ご両親に話そう。近衛の両親が許してくれるなら……」
甘えるように肩口に摺り寄る近衛の頭を、優しく撫でた。
……たぶん、許されないだろう。
卒業まで…思ったけど。
僕の幸せな時間は、ここで終了……だ。
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