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ごめんね、先生 < Side犬養
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俺は、やっぱり、Ωだった。
Ωの子から発情期の話を聞いたコトがあった。
その子は、抑制剤の効きが悪いタイプだった。
理性とは真逆の本能に支配された脳は、繁殖にしか興味を示さず、事の終わりに後悔の念だけが取り残された。
大好きな人を目の前にすればするほどに、乱れ方は度を越し、羞恥に苛まれる。
だから、発情期の間は、近づかないでとお願いされた。
βだと伝えても、惑わせてしまい友人関係を壊したくないからと、その子は、発情期の間中、前後の猶予を持ち2週間程度、家に籠っていた。
当たり前だが、実際に、見た訳じゃない。
自分がどれ程乱れるかなど、想像も出来ない。
でも、九良に幻滅されるのだけは、嫌だ……。
せめて、発情期が終わるまでは、傍に寄ることを避けたかった。
運命であろうがなかろうが、そのフェロモンは、九良を惑わせてしまうから。
話をしたくても、それどころじゃなくなる。
本能は、理性を簡単に凌駕するから。
学校を休むという選択肢もないわけじゃない。
でも、勉強が遅れるのは嫌。
なにより、遠くからでもいいから、九良の姿を見たかった。
帰り際、神田の所に検査を受けに行ったコトを、報告にいこうかと思っていた。
教室を出て、吸い込まれるように振り返った先、九良の姿が見えた。
カッコいい……。
って、そんなこと考えてる場合じゃないっ。
俺は慌てて踵を返し、玄関に走った。
靴を履き替え、校門の外へと走った。
植木の隙間から、玄関を盗み見る。
俺が走り出た校門をじっと見やり、きゅっと眉根を寄せた九良は、苛立ったようにぐっと拳を握りしめていた。
ごめんね、先生。
俺の発情期が終わるまで、少しだけ待ってて欲しいんだ。
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