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胸を引き裂く言葉 < Side神田
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一度、瞳を閉じた近衛は、大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。
気持ちを落ち着かせるように、頭を軽く振るい、再び口を開いた。
「俺のコト、好きじゃねぇの?」
酷く哀しく傷ついた瞳が、僕を見やる。
その奥には、消化しきれず解せない感情が怒りとなり、鳴りを潜める。
好きじゃない…言えたらどんなに楽だろう。
愛おしくて堪らない。
ずっと傍で寄り添っていたい……。
だけど。
近衛から、家族や将来を奪うことは、出来ない。
僕は、教師だから。
仮しも、正しい道を歩ませることを生業としている者だから。
僕との恋に溺れさせ、貶めて良いわけがない。
「俺が、他の誰かのものになってもいいのかよっ」
良くない。
良くないと思ったところで、僕にはどうする術もない。
「どうしろっていうんだよ! 僕は……僕は、君が幸せならそれでいいっ。それがいいんだっ。傍に僕が居なくてもっ」
放った言葉が、自分の胸に、深く深く突き刺さる。
突き刺さった言葉が、僕の胸を引き裂いていく。
「……居な、くてもっ」
溢れだした哀しみは、涙に代わり、ほろほろと零れ落ちていった。
本当は、傍に居たい。
離れたくない。
ずっとずっと一緒に、傍で笑っていたい。
涙に声を詰まらせる僕に、ずっと傍観していた九良が口を開いた。
「神田に捨てられたら、死んじゃいそうだな?」
近衛に突き飛ばされた九良は、図書準備室の端の机に寄りかかり、ゆったりと僕らを眺めていた。
揶揄うように、可笑しそうに問う声に、近衛の鋭い視線が、九良を睨めつけた。
αの近衛が、Ωの僕に捨てられたくらいで、死ぬわけない。
でも、哀しげに切なげに訴えてくるその瞳もその声も、僕の胸を締めつけた。
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