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丸く収まる
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捨てられても仕方ない。
ほんの少しでも、いい。
一時だけでも、いい。
引き離されるその時までは、番である近衛の傍に居られるコトを、…幸せなこの瞬間に、身を投じよう。
「[運命の番]………舐めんなっ。おまえのコト、金輪際、自由になんかしてやんないからなっ」
僕は、諦めるように瞳を閉じ、その胸に身体を預けた。
パンっパンっと大雑把な拍手の音が耳に響く。
甘い雰囲気を台無しにするような破裂音に、近衛の疲れたような溜め息が、僕の頭に落ちてきた。
「めでたし、めでたしぃ~」
九良の声に、僕は、慌て近衛の胸許から顔を上げる。
九良を振り返る僕に、近衛は、抱き締めるその腕を放すつもりは無いらしい。
「九良…、先生。いつまで居るんですか?」
棒読みで紡がれる近衛の言葉に、九良がフッと鼻に抜けるような音を立てる。
「なんか丸く収まったっぽいけど、神田的には、まだ納得いってねぇよな?」
よっと声を発した九良は、机から身体を離し、僕に問うように首を傾げた。
「どういうこと……?」
叱るような音で、僕に声を放つ近衛に、申し訳なさげな視線を向けた。
「親と絶縁なんて……」
ぼそぼそと紡ぐ僕の言葉に、近衛は、きょとんとした声を零した。
「絶縁なんてしねぇよ」
近衛の言葉に、今度は僕が、ぽかんとした顔を返す。
「親父の許可は貰ってきた。兄貴を呼び戻すって。俺、家継がなくても良くなったんだ」
くっと口角を上げる近衛は、言葉を繋ぐ。
「αに固執するのも止めるって、俺は、好きに生きていいって」
近衛は、僕の頬にキスをひとつ落とした。
あんなに騒ぎ立て、啖呵を切ってしまった手前、どんな顔をすればいいのか、戸惑ってしまった。
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