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そんな人生、クソ喰らえ < Side近衛
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神田が、居なくなった後。
足音荒く、家の中へと歩を進める母を追った。
「やっと見つけたんだっ」
手を掴む俺に、母は、苛立たしげに振り払った。
「俺の[運命の番]は、あの人だっ。あの人しかいないっ」
俺の声が聞こえているはずなのに、母は、無視するようにリビングへと入っていった。
「何を馬鹿げ……」
「[運命の番]…か」
リビングに足を踏み入れ、呆れたように放たれる母の声に被るように、ボソリと聞こえてきたのは、父の声だった。
「もう、いいんじゃないのか? 賢理を自由にしてやれ」
ヒステリックに歪んだ視線を向ける母に、父は、小さく息を逃がした。
「お前だって、辛い思いしただろ?」
母は、本当はΩの彼女と番になりたかった。
儚は、母の[運命の番]だった……。
だけど。
家柄や世間体、そんな柵に、父と番になることを余儀なくされた。
母の瞳が、悔しさに歪む。
「賢理まで、同じ轍を踏ませることは無い」
αだから、名家だから、幸せになれるとは限らない。
「俺たちで、終わらせてやろう。あとは、俺がなんとかする」
傍に寄った父は、片腕で母を抱き寄せた。
「幸理(ゆきみち)を呼び戻す」
幸理は、一番上の兄だ。
βと判定され、今は、離れて暮らしていた。
βの彼は、尋常じゃない努力をしたのだろう。
今は、裏方だが、近衛家の重要なポストを担っている。
「αに拘る必要が無いなら、普通に考えれば、長男に継がせるのが順当だからな」
自分の言葉に、父は、首を縦に振った。
「愛する人を守れない。愛する人と共に生きられない。ただ、家柄のために。……そんな人生、クソ喰らえだっ」
にやりと片方の口角を上げる父に、俺は、呆気に取られていた。
ふっと小さく息を吐いた父の瞳が、俺を見据えた。
「お前は、好きなように生きろ」
重く心の底へと響く父の言葉に、俺は、そのまま家を飛び出していた。
俺は、無意識に学校に向かい駆けていた。
見えない繋がりが、俺をそこへと引き寄せた。
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