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ガキと一緒 < Side九良
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「はーっ。幸せオーラ、うぜぇっ」
目の前で展開されるイチャつきに思わず声が漏れた。
「おまえだって幸せだろ」
つらっと放たれた近衛の言葉に、イラッとする。
「お前に何がわかるんだよ」
瞳を細め、睨むような視線を向けるオレに、近衛は、すっと瞳を逃した。
つい先日の金曜日。
帰宅する前に話し込んでいる生徒や、部活に向かう生徒が疎らに点在する廊下。
教室3つ分ほど離れた先に、犬養の姿を見つけた。
ふと、振り返った犬養と、視線が交わる。
ばちりと視線が重なった瞬間、犬養は踵を返した。
授業を受け持っているわけでもなく、接点のない教師と生徒。
流石に呼び止めるのは、憚られた。
生徒たちの手前、廊下を走ることもできない。
不審な行動は、起こせない。
オレに背を向け、反対側の階段から降りていく犬養を、大股で歩き、追う。
生徒用の玄関で靴を履き替えた犬養は、振り返ることなく、外へと駆け出していた。
ここ数日、こんなコトばかりだった。
避けられているとしか、思えなかった。
気になり出したら、止められない。
仕事にも身が入らなかった。
終わらない仕事を自宅へと持ち帰り、パソコンの前に座った。
ぐるぐると回る思考に、ぐっと身体を後へ反らす。
学校では、ほとんど顔を見ることはない。
学校の外でなど、当たり前だが会うこともない。
だから、あの時まで、犬養の存在は知らなかった。
好きだと実感し、顔を見たくなり、声を聞きたくなり、犬養の学年のクラスが並ぶ2階に足を運んだ。
会いたいが為に、一目でもいいから犬養の姿を見たいが為に、用の無い2階へと足を運ぶ。
いい歳をした大人の思春期のような行い。
自分の子供染みた行動に、嗤ってしまう。
3年の授業を受け持っていないオレが、その階に居ることは不自然、極まりない。
だけど、会いたい衝動を押さえられない。
それほどまでの想いに駆られ、行った2階で、犬養に何度も、…避けられた。
持ち帰った仕事が捗らない上に、必要なデータが足りないコトに気がついた。
「はぁーっ。何やってんだよ」
ガシガシと頭を掻き、気晴らしがてら赴いた学校で、逃げ出そうとしている神田を見つけたのだ。
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