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嬉しいけど、怖いんだ < Side犬養
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何の用事もない休日。
ベッドの上でゴロゴロと転がりながら、動画を眺めていた。
抑制剤さえ摂取していれば、俺の体調は問題ない。
動画の閲覧を邪魔するように、着信を知らせる小窓が表示される。
誰?
見たことない番号に、ヘッドフォンを外し、出ようかどうしようか少しだけ思案した。
「はい……」
思わず、訝しげな声で電話を取った。
「犬養?」
九良の声だと、直ぐにわかった。
心臓が、ばくんっとひとつ鳴った。
声を聞いただけなのに、心がざわついた。
もっと、もっと、その声を聞きたいと思った。
返事をしたかったけど、瞬間的に、喉に声が詰まる。
会いたい。
触れたい。
抱き締めたい。
そんな欲望が、胸の中で渦を巻く。
でも。
怖くて仕方ない。
番や子供は、いらないって。
Ωの俺じゃ、九良の重荷にしかならないんじゃないかって。
乱れた俺を見て、幻滅されるんじゃないかって。
……自分がどうなってしまうのか、怖くて仕方ない。
虐げられてでも、生きづらくても、Ωだったら良かったのになんて。
そんな簡単な話じゃなかった。
いざ、自分の立ち位置が変われば、喜びだけで済む話じゃない。
喜びの分だけ、不安にも駆られる。
……不安の方が勝っている。
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