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キスしたいっていう……好き
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少しの沈黙を挟み、九良が再び口を開いた。
「…オレのコト、好きか?」
心配げに、遠慮気味に、電話口から聞こえる九良の声。
優しいその声色に、心臓がドキドキと拍動する。
「好き……です」
ギュっと九良の声が聞こえるスマートフォンを握り締めた。
「どういう、好き……?」
間違えたくないというように、九良は、きちんと言葉にするコトを、要求する。
「キスしたいっていう……好き、です」
顔なんて見えていないのに、恥ずかしくなる。
頬が、顔が、熱くなる。
はぁっと盛大に、溜め息のように空気を吐いた九良は、よしっと小さく声を発した。
「決めた。待ってろ」
告げると、そのまま電話が切られてしまった。
プープーとなる機械音に、胸の中が寂しくなる。
もっと、話していたかった。
もっと、声を聞いていたかった。
もっと、……。
考えれば考えるほどに、寂しくなる。
どうでもいいくだらない動画でも見て、気を紛らわせようと、再びヘッドフォンをつけ、ベッドの上に転がった。
――ピンポーン
電話を切ってから10分程。
来客を告げるインターフォンの音が、耳に小さく侵入する。
俺の部屋は、2階の端で、玄関から遠い。
階下には母親がいるから、俺はそのままベッドの上でゴロゴロと転がっていた。
再生されている動画は、面白いはずなのに。
心ここに非ずで、笑えない。
待ってろって、何を?
俺は、何をどうすればいいの……?
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