アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
否応ない < Side犬養
-
――コンッ
小さく部屋の扉が叩かれた。
「いるよー。なにぃ?」
母だと思い、スマートフォンから視線を外さず、ヘッドフォンを取りながら、声だけを扉に向け返した。
開いた扉から、大好きな香りがする。
慌て振り向く俺の瞳に映ったのは、にたりとした自慢気な笑みを浮かべる九良だった。
「えっ? は? なんで?!!」
腹這いで寝転がっていた身体を翻し、壁まで尻で後退る。
ゆったりと歩み寄った九良は、あの時のように、オレの唇を目指し身体を近づけた。
「貰った」
じりじりと距離を詰められた俺は、補食される寸前の小動物状態だ。
「な、なに? なにをもらったんですか?」
俺は、何もあげてない。
何が起こっているのかも、わからない。
近すぎる距離に真っ赤に染まる顔。
混乱に、きょろきょろと彷徨う瞳。
「お前を、嫁に貰った」
「へ?」
間抜けな声を発し、事態を飲み込めない頭に、首が傾がる。
くっと上がった九良の口角に、ゆるりと近づいた唇は、ちゅっと小さくキスを落とした。
「お前は、オレのもんになりました。母親の了承も得ました。卒業したら、嫁に貰います」
九良の言葉に、俺の瞬きが止まらない。
「嫌?」
九良は、断られることなど有り得ないと、自信しかない笑みを浮かべる。
にこにこと笑みながら、投げられる疑問符に、俺は、否定するつもりなど毛頭無い。
俺は、ぶんぶんと頭を横に振るう。
「ま、嫌だって言われても、お前に拒否権なんて与えねぇけどな」
九良の両手に、頬が包み込まれた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 224