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玩具だったんだ
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「何してんだよ!」
苛立ちに任せて放った怒声は、懐里を縮み上がらせる。
「ごめ、………ごめ、なさっ…」
懐里は、小さく丸まり、必要のない謝罪を繰り返す。
オレは、血の滲む懐里の手首を、掌で覆った。
ザーザーと降り注ぐシャワーの水を止め、ぐっと懐里を睨めつける。
苛立ち、後悔、不安、虚しさ。
こんなことをした懐里に苛立ち。
友達という立場に甘んじ、懐里の変化に気づけなかった後悔。
懐里が消えてしまうのではないかという不安。
オレを頼ってくれなかったことへの…虚しさ。
色々な感情が綯交ぜとなり、胸を締めつける。
困惑の色を露に、懐里の瞳は、縋るようにオレを見やる。
問い詰めても、追い込むだけだ。
オレは、空いている手で、懐里を抱き寄せた。
オレの胸に、頭を預けてきた懐里は、うっ…うっ…と、引き攣る音を漏らしながらオレの腕の中で泣いた。
少しだけ落ち着いた懐里は、オレの胸に頭を預けたまま、言葉を紡ぐ。
「死のうと思ったけどダメだった…」
なんで……。
その言葉は、声にならない。
声にしてしまえば、懐里を追い込み、口を噤んでしまうだろう。
オレは、聞いているという意思表示のつもりで、びしょ濡れになっている懐里の頭を撫でた。
「おれ、意気地無しだから…」
止血のつもりで、ぐっと握っていた懐里の手首。
懐里は、オレの手をやんわりと剥がすと、傷口を見ながら、困ったように笑う。
何本もの赤い線が走る懐里の手首。
でも、その傷1本ずつは、酷く浅い……。
「捨てられた……」
ぐっと眉間に皺を寄せるオレに、懐里は、総てを諦めたような顔をする。
「番の前で、他の男と公開セックスしろって……。自分はもう、おれのコト、抱かないって…興奮しないってっ」
ぼそぼそと紡がれる懐里の言葉に、怒りと悔しさに、血が沸騰する。
「おれは、玩具だったんだって……」
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