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βという性を恨んだ
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失望に、肩を落としたままに、懐里は言葉を繋ぐ。
「最初から卒業ついでに捨てるつもりだったって……」
涙混じりの鼻声で言葉を紡いだ懐里は、俯き肩を震わせた。
戯れに。
自分の優位性を誇示するために。
優越感に浸るために。
玩具にするために……。
懐里は、最低のαに引っ掛かった。
番になるのは、愛する人と一緒に居たいからだ。
Ωは、奴隷として所有するものじゃない。
懐里は、俯いたまま、ボロボロと涙を溢す。
オレには、どうもしてやれなくて。
ただ、その震える身体を抱き締めてやるコトしか出来なくて。
「ここに居たら、おれはアイツの仲間に玩具にされるから、死のうと思ったんだ……」
そう呟いた懐里を、大学に通うために借りた自分の家に、住まわせた。
オレ自身は、大学に通うつもりだった。
だけど、懐里を独りにするコトが、不安で仕方なかった。
結局、受かっていた大学にも行かず、半年ほどは、ずっと家に居た。
発情期…、懐里は、捨てられた事実を認めたくなくて、巣作りをしようとしたことがあった。
ほんの10分程度、外に出ていた間に、タンスやクローゼットの中身が、全部ぶちまけられ、泥棒でも入ったのかという部屋の荒れようだった。
でも、オレのものは一切、無くなってはいなかった。
前の家から持って来ていた、たった1枚の元の番のシャツを抱き締めて、泣きつかれたように懐里は眠っていた。
どんなに蔑にされようと。
どんなに酷い仕打ちを受けようと。
番になった相手を憎み切れない……。
胸が痛くて。
でも、オレには、どうしてやることも出来なくて。
βという性を恨んだ。
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