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兄弟喧嘩
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地位も、名誉も、名声も。
βである兄が、手に出来るのだ。
「何が不満がなんだよっ」
考えれば考えるほど腹が立ち、俺は、言葉を吐き捨てた。
荒く放たれた俺の言葉に、乗じるように、幸理の声も荒くなる。
「お前のせいでっ。いい迷惑なんだよっ」
電話口から響く幸理の声に、俺の手を掴む神田は、居心地が悪そうに、不安げに顔を歪めた。
俺の隣で、神田は、心配そうに瞳を揺らす。
「俺のせい? 何、言ってんだよ」
呆れるように、静かに言葉を放った。
感謝こそされ、恨まれるコトは、何もないはずだ。
神田のためにも落ち着こうと思うのに、幸理の意味不明の苛立ちをぶつけられ、胸がムカムカする。
「黙って近衛の家に戻ればいいだろがっ」
苛立ちのままに、言葉を吐き捨てた。
「そういうわけにも、いかねぇんだよ」
苛立ちを逃がすように息を吐いた幸理が、言葉を繋ぐ。
「こっちにだって、事情がある……」
溜め息混じりの幸理は、不貞腐れたように、吐き捨てるように、声を紡ぎ続けた。
「お前が大人しくαの女性と結婚して、家を継いでくれれば、こんなややこしいコトにならなかったのに」
止まらない幸理の苛立ちは、俺の琴線に触れる言葉を放った。
運命の相手と番になった俺を捕まえ、αの女と結婚しろ、と。
俺の中で、プツリと何かが切れた。
「知らねぇよ」
あまりにもムカついて、俺は、そのまま通話を強制的に切断した。
「……仮にも、お兄さんだろ」
ムッとしたように紡がれる神田の声に、俺は、罰が悪く視線を背けた。
「そういう態度は良くない」
じとっとした瞳で見られれば、俺は、口を噤むしかない。
「お前が家を出て、ここに居るコトが問題なんだろ?」
きゅっと眉間に皺を寄せ、神田は、俺を責めるように問い質す。
「何が気に食わねぇんだよ。近衛の家に戻れるんだから、いいじゃねぇか」
ぼそっと拗ねたように放つ俺の声に、神田は、呆れたように息を吐く。
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