アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
離れていかないで
-
苦い顔のままに口を噤むオレに、懐里は、寂しそうに視線を落とす。
「そうだよな。そろそろおれも、独り立ちしないとな」
幸理におんぶにだっこのまんまじゃな…、と、懐里は自嘲するような笑みを見せた。
こんな形で、オレ達の関係は、また終わるのか?
……嫌だ。
オレは、懐里を放したくない。
懐里に[運命の番]が現れても、オレはたぶん祝福なんてしてやれない……。
「いかない」
ぼそりと放ったオレの言葉に、懐里は、怪訝な瞳を向けた。
「オレは、懐里を置いて何処にもいかない」
言い切るオレの言葉に、懐里の瞳の中で、光がくるりと弧を描いた。
懐里の瞳の中に、オレが映る。
言葉は、自信を持って放たれているのに、瞳の中のオレは、離れていかないでと情けなく懐里に縋っていた。
懐里は、柔らかく笑む。
そっと伸ばした懐里の腕が、オレを包む。
その温もりに、オレは縋る。
我儘な子供をあやすように、懐里の掌は、オレの頭を優しく撫でた。
首許に触れる懐里の吐息が、熱を纏う。
発情期……か。
まだ、少し先だと思っていたが。
こんな懐里を置いて、何処へ行けというのだろう。
懐里が苦しいときは、オレが、それを取り除いてやりたい。
オレを頼って欲しい。
オレの傍に居て欲しい。
お願いだから。
オレから、離れていかないで……。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
87 / 224