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嗤いを呼ぶ結論
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懐里の身体を清め、あらゆる液体で、ぐっしょりと濡れたシーツを敷き換えた。
一通り片付け終え、リビングのソファーに視線を向ける。
無造作に放ってあったスマートフォンを拾い上げ、腰を下ろした。
通知を知らせる明かりが、チカチカと光る。
届いていたのは、賢理からのメッセージだった。
『週末、時間作って』
賢理も、電話では埒が明かないと感じたのだろう。
賢理を近衛の家に戻せれば、オレも用済みになる。
このまま、今まで通り、懐里の傍に居てやれる。
でも今は、懐里の傍を離れられない。
発情期である懐里を置いて、長時間外出することは避けたかった。
オレは、2週間後を指定した。
返信を済ませたスマートフォンを、横に投げ出した。
身体を、ソファーに深く沈め、片手で覆った顔で天井を仰いだ。
懐里は、儚い。
目を逸らせば、この世から消えてしまいそうなほどに、懐里の生への執着は薄い。
そんな懐里を置いて、オレはどこにも行きたくない……。
違う……、オレのエゴだ。
懐里の為じゃない。
ただオレが、懐里の傍を離れたくないだけで。
たぶん、懐里は、オレなど居なくても生きていけるんだ。
……離れなければ、いけないのだろうか。
ここで離れたら、きっと、もう会えない。
全身で頼られることを知ってしまったから。
心の支えとなるオレを頼る存在が消えてしまう喪失感は、計り知れない。
懐里の為と頑張っていたオレは、努力を放棄するだろう。
こんなにも愛おしいと感じる存在が、消えてしまう恐怖。
離れ離れになれば、懐里ではなく、オレが、生きて行けなくなるのだろうな……。
辿り着いた結論に、オレは、自嘲の嗤いを零していた。
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