アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
平行線の話し合い
-
本当なら、オレも、一般のβと同じように生きていた。
だけど、オレは。
「オレにだって、守りたい人がいるんだ。お前が番を大事に思っているように、懐里に嫌な思いはさせたくない」
諦めたオレは、口を割る。
理由を話さなければ、話は平行線で、埒が明かない。
「カイリさん? 連れて戻ればいいじゃねぇか。傍に居れば、守ってやれるだろ」
解決じゃないかと言わんばかりに言葉を紡いだ賢理。
自分の番は大事に守るのに、オレの大切な人は、近衛の渦中に連れていけと?
自分勝手な言い分を並べる賢理の態度に、腹が立つ。
近衛の家に戻ったら、オレは懐里を守れない。
守らなきゃいけない義務がある訳じゃない。
懐里は、守って欲しいとも思っていないかもしれない。
…独り立ちしないとって言っていたぐらいだ。
それでもオレは、自分の好きな人を、自分の出来る限りの範囲で構わないから、守りたい……。
たとえ、オレだけが、懐里を好きだとしても、出来る限り、傍で…。
「お前でさえ番を思って近衛の家に戻ることを渋ってるのに、…番でさえ連れて戻りたくないと思っているクセに、番にすらなれないオレには連れて戻れって言うのか?」
思っているコトを、そのまま言葉として放った。
苛立ちに、声は荒くなる一方だ。
「βのオレの大事なもんは、傷つけられても仕方ないってコトかよっ」
オレの荒ぶる声に、賢理は、面倒そうに息を吐く。
「そんなコト、言ってねぇじゃん……」
βとΩ…番になれないオレたちには、賢理よりも立場がない。
それに、オレたちは、愛し合っているわけでも…、ない。
「もういい……」
オレは、賢理を説得するコトを放棄した。
「何がいいんだよ」
賢理も、疲れたように言葉を紡ぐ。
オレは、徐に立ち上がり、会計伝票を手にする。
無表情になっているオレに、賢理は、食い下がるコトはしない。
オレは、少なからずαである賢理に嫉妬心がある。
話せば話すほど、オレの卑屈な思いが膨れ、勝手に心が削られていく。
賢理を近衛の家に戻すのは無理だと諦めざるを得なかった。
去り際に、口を開いた。
「オレたちは、お前の思ってるような関係じゃない」
簡単に、オレの一存で、連れていくという判断が下せる間柄じゃない。
ただ、オレが執着しているだけなんだ……。
何か他の方法を探るしかない。
オレは、逃げるように、話し合いの場を放棄した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
95 / 224