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一番恐れているコトは
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答えの出ない問題に、頭を抱えるしかなかった。
オレが、近衛の家に帰ればいいんだ。
一緒に来るとしても、離れていくとしても。
懐里が決めればいい。
一緒に来ないなら、その場で、懐里はオレの手から離れてく。
一緒に来れば、少なからず、Ωである懐里は嫌な思いをするだろう。
でもオレは、懐里に、どちらの選択もして欲しくない。
オレが懐里のコトを諦めれば、それでいいのは、わかる。
それが一番、誰もが幸せになる選択なのかもしれない。
あの家に戻れば、嫌な思いをするのは、βであるオレも同じだ。
αの中に飛び込むのだ、いい気はしない。
……違うな。
懐里のためだなど、…建前だ。
オレは、怖いんだ。
懐理が[運命の番]に出会ってしまうコトが。
αの中に居る懐里の運命の相手。
そんな相手に出会ってしまえば、懐里は間違いなくオレから離れていく。
近衛の…αに執着していた近衛家の周りには、自然とそういう奴らが集まってくる。
懐里の出会いの確率も、格段に上がる。
一緒に連れていけば、オレが捨てられる確率が上がるんだ。
すぐ訪れる現在の話か、先の未来の話か。
どちらにしても、オレには、懐里に捨てられる未来しか見えなかった。
近衛家に戻るコトは、オレの失恋を決定付けるコトに他ならなかった。
まだ本家に戻るとは言っていないのに、父は、戻ってくると信じて疑っていない。
前より、地方での泊まりがけの仕事が増えていた。
顔を売っておけと言わんばかりだ。
今日は、家へ帰れる予定だった。
既に2日ほど家を空けている。
昼過ぎまでは順調にスケジュールをこなしていたのに。
急なトラブル案件で、半日ほど時間を食われた。
16時過ぎの電車には乗れる予定だったが、このままでは、最終電車すら怪しい。
オレが心配していたのは、懐里の食事だ。
あいつは、放っておいたら3日でも、4日でも食事を抜くクセがある。
冷凍食品は、大量に冷凍庫に入っている。
でも、懐里が自分で温めて食べているとは思えない。
賢理に様子を見に行かせようかと思ったが、それも、癪に触る。
ふと、玄弥のコトを思い出し、スマホを手にした。
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