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幸理の頼み < Side九良
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「頼みがあるんだけど……」
幸理からの電話は、神妙な音を纏っていた。
「オレが聞ける話なら、なんでも聞いてやるけど?」
疲れた声で伺いを立ててきた幸理に、オレは、不安げな音を返した。
儚のときは、世話になっている。
それから、なんとなしに連絡は取り続けていた。
どんな無茶振りをされるのかと、思わず身構える。
九良家の長男で、αであるオレには、出来ないことの方が少ない。
家をそのまま継いでいれば、今頃は、当主の椅子にふんぞり返っている生活だろう。
でも、そんなのは、つまらない。
教師の職だって、オレがやりたくてやっているだけだ。
「玄弥、お前もう番いる?」
幸理の問いに、オレは、疑問符を浮かべた。
「ん…? あぁ、将来を約束しているヤツなら居るけど……」
幸理の言葉の意図が掴みきれずに、歯切れの悪い声を返した。
「そうか。それなら、オレの家に行って欲しいんだ」
何を伝えたいのか意図が見えず、オレは、さらに首を傾げる。
「一緒に住んでるヤツが居るんだけど、そいつが…、心配だから」
疲れたように吐かれる息に、オレは、言葉を返す。
「心配?」
「……放っといたら、ごはん食べないんだよ。昔、番に捨てられた経験があって。発情期の度に荒れてたんだ」
発情期の度に荒れていたというコトは、一緒に住んでいる相手がΩだと推測された。
「今は、落ち着いてるんだけど、それは、オレの目があるからで……」
一度、言葉を切った幸理は、ふっと小さく息を吐き、話を続けた。
「大丈夫だとは思うんだけど。発情期も過ぎた後だから、問題はないと思うけど、でも、ごはん食べてないと思うんだよね」
落ち込んだ声で話す幸理に、オレは口を開く。
「オレが様子見に行って、なんか食わせればいいのか?」
オレの問いに、幸理は、遠慮がちに疑問符を返す。
「頼んでいいか?」
何を遠慮しているんだか……。
「頼んでいいもなんも、そんなことなら別に構わねぇよ。好き嫌いは?」
オレの質問に、幸理は、ほっと息を逃し、口を開く。
「ないよ。コンビニの弁当でも、何でもいいから。あ、キーナンバーとか住所、メッセージでいいか?」
「キーナンバー?」
幸理の問いに、オレは、首を傾げた。
「うちの鍵、ナンバーを入力する形なんだ。たぶん、インターフォン押しても、懐里、出ないと思うから」
「カイリ?」
疑問に思ったコトを、そのまま返した。
「そう。冬峰 懐里って言うんだ……」
愛おしそうに呼ばれる名に、オレは、推測する。
幸理はきっと、その人物を好きなのだろう、と。
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