アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
頭の中をちらつく姿
-
アイツらが居なくなって、暫く時間が経っていた。
外は漆黒から、薄明かりへと変貌していた。
逃げ出したいのに、おれには、宛がない。
出来るコトは、自分を消すコト。
それしか、思いつかなかった。
アイツらの玩具や慰み物になるくらいなら、死んだ方がマシだと思った。
消えてしまわなくては。
居なくならなくては。
そう思うのに、おれの頭の中に、幸理の姿がちらついた。
ただ一緒の部屋で、のんびりと本の頁を捲り、穏やかな時を過ごしている姿。
ふと視線を上げた幸理は、おれの視線に気づくと、小さく首を傾げる。
緩く口の端を持ち上げ、淡い笑顔をおれにくれた。
もう一度だけ、その笑顔を見たかった。
あんなにひどい仕打ちを受けたのに、おれは、総てを捨てる選択を出来なかった。
幸理の家に行く前に纏めた荷物の中に、元番のシャツを忍ばせていた。
クローゼットの中にある巣の中から1枚だけを手元に残していた。
あの時の苦しさが。
あの時の寂しさが。
あの時の虚しさが。
ありありと蘇り、涙が溢れてしまった。
幸理は凄い家柄の人間だった。
おれを置いて、居なくなってしまうのかと思った。
それも、仕方ないコト。
諦めを浮かべるおれを、幸理は、抱き締める。
『オレは、懐里を置いて何処にもいかない』と。
愛されているのかと、勘違いしてしまうほどに。
口の中へと押し込まれる避妊薬に、現実に引き戻された気がした。
幸理は、おれを好きな訳じゃない。
そこにあるのは、単なる同情……憐れみ、なんだ。
いつも意識を失ったフリをしていた。
飲まされそうになった薬は、唾液を飲み、飲んだフリをし、吐き出し隠していた。
九良の姿を見て、昔の番の姿がフラッシュバックした。
おれが邪魔だから。
新しい相手を誂えて、おれをここから追い出そうとしているのかと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
109 / 224