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決定的な一打
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玄弥に会わせてから、懐里の様子がおかしかった。
今も、ソファーに座りテレビを見ているオレの膝に頭を乗せ、うたた寝をしている。
少し前なら、眠くなればベッドへと移動したし、テレビを見るにしてもソファーに並んで座る程度で、ここまで密着してこなかった。
玄弥の存在が、余程怖かったのか……。
懐里の甘えにオレは、あえて、何も言わない。
懐里の好きなようにさせていた。
ぼんやりとテレビを見ていたオレの横で、スマートフォンが震えた。
ソファーの肘掛けに置いていたそれを手に、発信者を確認する。
―― 近衛家
その文字に、オレは、重く息を吐く。
無視してしまおうかとも考えたが、得策ではない。
仕方なく、懐里を起こさぬように、画面をタップし、電話に出た。
「はい」
「幸理……?」
電話の相手は、母だった。
「はい」
抑えた声で話すオレに、母は、言いにくそうに言葉を放つ。
「戻ってくる気に…、なった?」
遠慮がちに放たれた返答に困る質問。
オレは、声を詰まらせる。
躊躇いに無言のままでいるオレに、母は、言葉を足す。
「あなた、独り身よね? 恋人は?」
その質問も、オレを追い詰めた。
Ωに少なからず偏見を持っている母に、懐里のコトは話したくなかった。
「……そうですね。恋人も、居ないです」
膝の上で眠る懐里から、窓の外へと視線を逃す。
懐里の存在を知られたくないオレは、独り身だと答えるしかない。
「独りだと何かと、不便じゃない?」
結婚を示唆していることなんて簡単に見通せる。
腫れ物にでも触るように遠回しに話されるのは、好きじゃない。
「母さん、言いたいコトあるなら、率直に言っていいですよ……」
疲れた声を放つオレに、電話の向こうで溜め息が漏れた。
「近衛家に戻るにしても、戻らないにしても、αの女性と、結婚した方がいいと、私は思うの」
賢理に寄せていた期待が、オレへと移ったのだ。
「お見合い、してみない?」
決定的な一打を放たれた。
自分で先を促したのだが、いざ言葉として受けとれば、嫌気も差す。
「見合い…ですか」
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