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格好の断り文句 <Side 瀬居
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懐里に、どこかへ出掛けるのかと訪ねられ、仕事だと返した。
そうだ。
この見合いは、オレに取って仕事の一部だ。
普段と同じ、仕事着のスーツで家を出た。
見合いの場所は、近衛家の応接用の和室だった。
相手は、着物姿で現れたが、表情から乗り気ではないことが窺い知れる。
食事をしながら、お互いの素性を紹介された。
断るつもりで来ているオレは、彼女の紹介を右から左に流していた。
彼女もまた、オレに興味を持っているようにも見えない。
2人でお庭でも見てらっしゃいと、和室から追い出された。
オレたちの意思など、関係ないように思え、少しばかりの不安を覚える。
「お断り、してもらえません?」
外に出て、早々に、見合い相手が口を開いた。
やはり彼女は、この見合いに乗り気ではなかったのだ。
その事に、オレは、そっと安堵の息を零した。
「……オレから断るより、貴女からの方が、角が立たないと思いますよ」
お互いに、遠くを見ながら、声を放つ。
言葉に彼女は、訝しげな視線をちらりと寄越すだけだった。
見つめ合い、笑いながら、楽しそうに会話する姿を求めていたであろう母は、さぞかし残念がっているだろうな。
「ご存じとは思いますが、オレは、βです。αやΩならまだしも、なんの変哲もないありふれた存在です。そんな男とは嫌だと言っていただけた方が、丸く収まりそうじゃないですか?」
顔に笑顔を貼り、彼女へと視線を向けた。
彼女は、近衛家を前にして、断りにくいと思っている。
それならば、オレのβという性は、格好の断り文句となる。
オレの視線に気づいた彼女は、同じように笑みを浮かべた。
「そうね。妙案ね」
ふふふっと小さく笑う彼女に、結婚に意欲的では無かったコトに、胸を撫で下ろす。
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