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訪れていない未来の絵図
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「羨ましい」
不意に呟かれた彼女の言葉に、瞳を向けた。
「私もβに生まれたかったの。βなら、普通に恋愛して、自由に生きられたでしょ? 近衛家の貴方は、仕方ないにしても、私の家なら、家柄に縛られるようなコトもないでしょうし……」
落ち込みに肩を落とす彼女に、オレは、更なる結婚の障害を見つけ、口角を上げてしまう。
「オレは未だ近衛家を継いでいない。姓も近衛じゃありません。これも、断りの材料になりそうですね」
お見合いの場に置いて、当の2人は、破談に向けて言葉を交わす。
不思議な光景が、出来上がっていた。
「でも、将来的には、近衛の家を継ぐんでしょ?」
首を傾げる彼女に、オレは言葉を詰まらせた。
「βも辛いですよ……」
彼女の質問とは関連のない答に、彼女は首を捻る。
「オレは、βの分際で、Ωに恋をしています。いつも怯えてるんです。彼の[運命の番]が現れたら、オレには、どうするコトも出来ませんから。諦めるしか方法はありませんからね」
苦く笑うオレに、彼女は同情するように眉尻を下げた。
「彼の[運命の番]が現れることが怖くて、彼をこの家には連れて来られないんです。この家を継ぐという決断が下せない……ここには、彼が運命に出会う可能性が山のようにありますからね」
懐里が、オレの手を離れて誰かの元へと走り去っていく。
そんな姿が脳裏に描かれ、ぎゅっと心臓を潰された。
まだ訪れていない未来の絵図。
オレは頭を振るい、苦い予想を振り払う。
再び、彼女へと視線を向け、話を続けた。
「この見合いが破談になれば、貴女は、運命の人に出会えるかもしれない。βには存在しない、[運命の番]という最愛の人に……」
[運命の番]に出会えれば、αである彼女は、βが羨ましいなどと思えなくなる。
オレたちβには感じられない幸福を、αである彼女は手に入れることが出来るのだ。
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