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真っ白な記憶 <Side 冬峰
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ダイニングテーブルへと頭を預けているのに、ぐらぐらと揺れている感覚に襲われた。
――ズキン
腹に刺すような痛みが走る。
「ぃっ………」
お腹を壊したときの痛みとは違う。
心臓の拍動のタイミングで、鈍痛が腹を襲った。
両手で腹を押さえたまま、動きを止める。
ぐらぐらと揺れる感覚も変わらず、車にでも酔ったかように、胸がムカムカとしてくる。
「気持ち………わる…」
ぼそりと放った言葉に、余計に具合の悪さを認識した。
きゅっと閉じていた瞳に、痛みから逃げるように、おれは意識を失っていた。
ふんわりと浮上する意識に、身体の痛みも目眩もなかった。
ただ、いつもとは違う硬いベッドの感触。
ゆったりと上げた目蓋。
視界に入ってきたのは、真っ白な世界。
ガサガサと衣擦れの音を立て、周りを探ろうと視線を走らせる。
「起きた?」
カラカラと椅子のキャスター音を立て、腰を上げた白衣の男が、おれを見やっていた。
何が起きているのか把握できずに、何度となく瞳を瞬く。
「避妊薬、飲みすぎて倒れたみたいだね。……飲まされたのかな?」
質問の意味がわからないおれは、きょとんとした瞳を向けた。
「抱いたけど、子供が出来るのが嫌だって多量に飲まされるケースが何件かあってね」
柔らかく、おれの警戒心を解こうとするように、笑顔を浮かべる男。
「瀬居くん、…君をここに連れてきた彼に飲まされたのかなって」
まるで、幸理を悪者にしようとしているみたいに聞こえ、おれは、慌て否定する。
「違うっ。幸理は、そんなことしないですっ」
がばりと上体を起こしたおれは、ぐらりと揺らぐ視界に、ぎゅっと瞳を閉じた。
白衣の男がおれの肩に手をかけ、ゆっくりと横たえる。
「ごめんね、変なコト言って…。急に動かない方がいいよ」
そう仕向けたのは、この男なのに。
おれは、恨めしそうに男を見やる。
「一応ね。確認しないとさ。彼の話と、君の話」
男は、申し訳なさ気な、困ったような笑みをおれに向けていた。
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