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香らない匂い
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宇波の部屋の前に辿り着く。
心臓が嫌な音を立て、まるで警告のように、激しく拍動していた。
玄関の扉に手をかけた帝斗は、ゆっくりとノブを引く。
鍵のかかっていない不用心な扉は、まるで早く入れと急かしているかのように感じた。
薄く開いた扉の隙間から、中を窺う。
見えるのは、奥に繋がる短い廊下だった。
「たまんねぇなぁ。揉みごたえ抜群」
廊下の先、微かに開いた扉の先から、下衆な声が聞こえた。
「すべすべで、気持ちぃわ」
先程とは違う声に、くつくつと嫌みに笑う音が続く。
嫌な予感しかしない。
帝斗と私は、土足のまま、その家の中へと踏み込んだ。
薄く開いていた扉を、弛く押した。
瞳に飛び込んできたのは、スマートフォンを手に、ベッドの上を録画している宇波と、裸体の妃羅に絡みつく2人の上半裸の男。
妃羅の瞳は、光を失い、呆然と宙を見詰めていた。
前から、無遠慮に妃羅の胸を掴み揉む男。
後から腰を抱き、背中に舌を這わせる男。
脳の血管が、ぶちりと音を立てた。
走り寄った私はベッドへと飛び上がり、前に居る男と妃羅の間に足を差し込み、蹴上げた。
足の甲で、顎から思いっきり蹴飛ばされた男は、頭を仰け反らし、そのまま後ろへ倒れ込んだ。
首が捥げそうなほどの重い一蹴りに、脳を揺らされた男は、簡単にベッドへと沈んだ。
軋むベッドに、何事かと顔を上げた背後の男の肩へと踵を落とす。
「ぐぁっ………」
醜い音を放った男の肩が、ぐっと落ち、妃羅を抱く腕から力が抜ける。
痛む肩を押さえ、身体を引く男との隙間に腕を差し込み、妃羅を抱えて立たせた。
激痛に背を丸める男の外れた肩に靴底をぶつけ、ベッドへとねじ伏せた。
くたりと私に撓垂れかかる妃羅。
嗅ぎ取れるはずの香りがしない。
間違いなく、妃羅は、宇波の餌食になっている。
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