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生きて地獄を味わえ
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「いいから。任せておけ」
捨てるように言葉を放った帝斗は、スマートフォンを手にした。
「あぁ。直ぐに、だ」
電話を切り、1分も経たないうちに、数人のスーツ姿の男が部屋の中へと乗り込んできた。
私は、驚きに瞳を丸くする。
男たちは、私など存在しないかのように、帝斗の傍へと歩を進めた。
帝斗の腕に抱かれる妃羅にも、瞳を向けなかった。
「処分ですか? リサイクルですか?」
"処分" = 死、"リサイクル"= 検体を表す隠語だと昔、帝斗に聞いたことがあったと思い出す。
物騒なコトなのに、まるで日常のゴミの処理でも聞くかのようだった。
「リサイクルでいい。ボロ巾になるまで……糸屑になるまで、使ってやる」
怒りの炎が、言葉の端々から零れて燃える。
するりと滑った帝斗の瞳が私を見やった。
「殺して楽にさせるより、生きて地獄を味合わせてやればいい」
弧を描く帝斗の口許。
そこで、悪魔が、笑っていた。
「なるほど、ね」
死ぬなんて楽な選択肢は、与えない。
こいつらには、死んでしまった方が楽だと思えるほどの苦痛がこの先に待っているのだ。
スーツ姿の男たちは、それぞれに伸びている男を抱え、部屋を出ていった。
残ったのは、帝斗と私、妃羅だった。
私は、ポケットに入っている財布から自分の事務所の名刺を取り出した。
「あんたが会いたくなったら、おいで。私はずっとここに居るから」
妃羅が羽織っている帝斗のジャケットのポケットに、名刺を差し込んだ。
「私からは会いに行かないから」
心の整理がついたら来ればいい。
一生、無理かもしれないけど。
落ち着いたとしても、私の姿に、思い出してしまうかもしれないし、あまりの辛さに、今この時の記憶を、忘れてしまうかもしれない。
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