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ちょっとした紹介料
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「それが完璧なら、想汰の貞操も安泰なんだけどなぁ……」
九良は、ばふっとソファーの背もたれへと身体を預けながら、溜め息混じりに言葉を紡ぐ。
「俺、そんな軽くないしっ!」
ばっと九良を振り返った想汰は、ムッとしたように声を放った。
「お前の気持ちの問題じゃねぇの。別に疑ってねぇよ。フェロモンなんて目に見えねぇもん、操れねぇだろうが。抑制剤で抑えたとしても、絶対じゃねぇからな。お前が誘惑しないぞって思っても、防げるもんじゃねぇんだよ」
九良は手を伸ばし、想汰の頸に触れる。
擽るように触られる頸に、想汰は、擽ったそうに首を竦めた。
「そんなこと言ったら、先生の方が、危ないと思うけど……?」
じとっとした瞳を向ける想汰に、九良は、ばつが悪そうに視線を背けた。
「臨床段階って言っても、防げないの運命ぐらいじゃないかな? そこそこ仕上がってきてるみたいだよ」
九良は視線を背けたままに、何かを思案するように、首を何度か縦に振る。
するりと流れた九良の瞳が、私に向いた。
「製品化されてねぇんだよな? 臨床受けたら、それ買えるか?」
運命以外なら遮断できるだろうと踏んだ私の言葉に、九良は乗り気になったようだ。
「たぶん、言えば譲ってくれると思うよ。協力費って形で。私も持ってるし」
探偵事務所をしていれば、番のいないΩとの接触も稀にある。
その際は、このマスクを着用しているが、誘惑され、我を忘れたコトは1度もなかった。
「それが手に入るんなら、やってやるか。想汰もな」
ぽすんっと想汰の頭に手を乗せ、にっと笑う九良。
「帝斗に連絡入れとく。後から、そっちに連絡いくと思うわ。…他にも居ない? 検体は多い方がいいんだよね~」
首を傾げる私に、九良は直ぐに答えを返した。
「お前がこの前探し出した懐里、Ωだぞ。一緒にいるのはβだから、番にはなれねぇし」
協力してくれるかは、わかんねぇけど…と、続く九良の言葉に、私は親指を立てた。
ソファーから立ち上がり、仕事机の引き出しを開け、事務所の名刺を手に戻る。
「じゃあさ、私の名刺、渡しといて。やる気になったらここに連絡してくれればいいから」
名刺に記されている電話番号をトントンっと叩き、指し示す。
「直接、黒羽に言えばいいんじゃねぇの?」
差し出した名刺に手を伸ばしながらも、九良は不思議そうな顔を見せた。
「微々たるもんだけど、紹介料が入るんだよ」
大事でしょ、とにんまりとした笑みを浮かべる私に、九良は、はいはいと二つ返事で名刺を手にした。
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