アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
無意識に擦る腹 < Side 冬峰
-
「冬峰さ~ん、冬峰 懐里さ~ん」
名を呼ばれ、はっとした。
おれは、人の肩に凭れ、微睡んでいたらしい。
隣の人が、小さく手を上げている。
呼ばれたのは、おれじゃないのか?
不思議に思いながら、ゆるりと開いた瞳を覗かれる。
「大丈夫ですか?」
心配そうに紡がれる声は、幸理のものじゃない。
見えたのは、大きな閉じられた手帳と、心配げな那須田の瞳。
「あ、すいません……っ」
定期検診に訪れた病院で、診察を待つ間に、那須田の肩に寄りかかり、寝てしまったらしい。
繋がった点と線に、慌て身体を起こした。
「冬峰さん。お変わりないですか?」
目の前に歩み寄った看護師が、しゃがみ込んで、微笑みながら首を傾げた。
「ない、です」
まだ、ぼんやりする頭で、声を返した。
「少し混んでるんで、診察までもう少しかかりそうなんですけど、大丈夫ですか?」
困ったように眉尻を下げながら問う看護師。
おれは、那須田に付き合わせるコトになるのが申し訳なく、視線を向ける。
「私のコトはお気になさらずに。冬峰さんが、お辛くなければ、問題ないですよ」
柔らかな笑顔で紡がれる言葉に、看護師へと声を向けた。
「はい。大丈夫です」
看護師は、ほっとしたように、すいませんと呟き、診察室へと戻っていった。
看護師がいなくなり、那須田に視線を戻す。
「すいません。寝ちゃって……」
「いえ。肩ぐらいなら貸しますよ」
先程まで寄り掛かっていた肩を、笑顔でぽんぽんっと叩く那須田に申し訳なく感じ、ぺこりと頭を下げた。
「うつ伏せになるの怖くて、座って寝てて……」
少し寝不足気味になっていた。
寝返りでうつ伏せになり、お腹を潰してしまいそうで怖かった。
おれは、無意識に腹を擦っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
173 / 224