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外された足枷
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与えられるコトのなかった愛情。
私は、誰にも向けることはないと思っていた。
知らないものは、与えられないと。
知ってしまっても、愛したいと思っても、それはたった一言で叶わぬものとなる。
「出ていっていい」
翌朝、朝食の準備をしようと部屋の扉へと手をかけた。
扉を開けた先に、縁が立っていた。
そのまま自室へと私を押し戻した縁が放った言葉。
言葉の意味を理解できずに、私は訝しげな瞳を縁に向けた。
「黒羽家への借金は、チャラだ。少し面倒だが、……それはこちらの話だな。お前には、関係ない。お前と黒羽も、もう無関係だ」
私に見詰められながら、するりと腰を落とした縁は、私の右の足首に嵌まるアンクレットに手をかけた。
――カシャン
小さな音を立て、私を縛っていた足枷が外される。
「お前は、自由だ」
黒羽の所有物でもなくなった私に、縁は自由を告げた。
「自由………」
呆けたように呟いた言葉に、縁は、アンクレットの痕が残る足首をふわりと撫でた。
名残惜しそうにすら感じる縁の手つきに、私は、呆然とした瞳を向けることしか出来ない。
今さら気づいても、遅い。
1度だけと、縁は言ったのだ。
金輪際、お前には手を出さない…と、言っていたではないか。
あの幸せな時間には戻れず、再び訪れるコトも……、ない。
「近衛の系列会社で働けるように手配した。仕事があれば、一人でも生きていけるだろ?」
縁の放つ声が、遠くに聞こえていた。
「好きなところに行っていい」
すっと立ち上がった縁は、宣言するように言葉を紡いだ。
未練など微塵もないと言わんばかりの縁の顔に、呆然と立ち尽くす私。
「…当面の資金がいるよな」
呆けている私を他所に、縁は、尻ポケットから茶封筒を取り出した。
自然と視線が、縁の動きを追った。
私の手を取った縁は、札束が詰まるその封筒を、握らせる。
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