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私が選んだ自由
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まるで、手切れ金だ。
縁には伝わっていないだろう私の想い。
そんな意図は、なかったのだろう。
でも、私の心をこれで清算しろと、金を握らされた感覚に、鳥肌が立った。
私の気持ちは。
私の感情は。
金で清算されてしまうような、軽く安っぽいものなのか。
手の中に握らされた茶封筒を、私は床へと放っていた。
ぱすんっと小さな音を立て、封筒が床を滑る。
私の動きに、縁は、怪訝な瞳を向けた。
「好きなところ……?」
ふわりと上がった私の視線に、縁は訝しげな表情を崩さない。
「本当に、自由に好きなところに行っていいんですか?」
重ねる質問に、縁は、疲れたような声を返した。
「そう言っているだろ? ……俺の世話になりたくないと言うなら、近衛の会社で働かなくても構わない」
床に投げられた封筒を拾い上げながら、縁は、言葉を繋ぐ。
「黒羽が恋しいなら、黒羽の元に戻ってもいい……」
立ち上がり、私を見やる縁の瞳が、なぜか寂しげに見えた。
好きで帝斗に抱かれていた訳じゃない。
まして、帝斗を好きな訳でもない。
悔しそうに紡がれる縁の言葉に、私は異を唱えた。
「恋しいのは、帝斗じゃない……」
だけど、本当の…縁への想いは、紡げない。
私が縁を愛しても、縁の運命の相手は、違うから。
βの私が、αの縁と結ばれることは、有り得ないから……。
私は小さく頭を振るい、気持ちを落ち着ける。
勝ち誇ったような笑みを湛え、縁に告げた。
「ここに居ます。好きなところに居ていいと言うなら、私は、ここに居ます……」
それも許されますよね? そんな想いを込めて、紡いだ私の言葉に、縁は、小さく口角を上げた。
抱かれなくたっていい。
不埒な欲求を持て余すことになったって、私は縁の傍に居たかった。
あの日からずっと、私は縁の傍に居る。
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