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気付く本心と押し寄せる後悔
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重ねた唇に、心が煽られた。
香水を使わずに那須田を抱き、気づいてしまった。
表層の疑似フェロモンではなく、その奥にある那須田本来の香りに、俺は、欲情していた……。
泣きながらも、泣いていないと強がった那須田は、気遣う俺を振り切り、自室へと逃げ帰った。
相当嫌だったのだろうと、男としての自尊心を傷つけたのだろうと、感じていた。
翌日。
俺は、那須田のアンクレットを外し、お前は自由だと告げた。
突如として与えられた自由に、那須田は困惑を露にした。
なぜ俺は、那須田を手放すという選択肢を選んでしまったのだろう。
自分の安易な逃げの考えに、後悔の念が押し寄せる。
でも、後悔したところで、もう遅い。
現金の入った封筒を、那須田に渡す。
少しでも楽に、幸せに生きて欲しいと、金を渡すコトくらいしか俺には出来ないから。
那須田は、渡された茶封筒を、汚いものでも触ったかのように、床へと放った。
俺に関わりたくないと言われた気分だった。
施しなど受けたくはない…、俺になど世話になる気はない、と。
どんなに俺が好きなっても、那須田はその想いを受け入れたりしない。
見えない那須田の気持ち。
意のままにならない現実。
自棄にならざるを得ない状況に、心が荒んでいった。
黒羽が恋しいのなら戻ればいいと告げる俺に、『恋しいのは帝斗じゃない』と那須田は呟く。
その上、好きなところに居ていいと言うなら、ここに居る、と宣った。
ここに居てくれるなら。
これ以上、詰める必要を感じなかった。
傍に居てくれるなら。
想いは届いていなくとも、構わなかった。
生活のすべてを俺頼りには出来ないと、那須田は近衛の系列会社で働き始めた。
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