アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
自慢げな想汰 < Side近衛
-
居心地の悪そうな幸理に、1人の女性が声を掛けてきた。
神田と懐里は、ジュースを口にしながら、ぼんやりと辺りを見回している。
幸理の傍に居るコトで、会話の内容が耳に届いてしまう。
話を盗み聞いているような変な罪悪感に俺は、数歩離れ、会場内へと視線を滑らせた。
「こら。勝手にちょろちょろすんなっ」
びしっとスーツを着こなす九良は、スーツに着られている感が拭えない想汰の頭を掴んでいた。
「想汰っ」
声を張った俺に、気づいた想汰は、ぱっと花咲くような笑顔を見せる。
頭に乗った九良の手を掴み、俺に向かい足を進めた。
「やっと見つけたぁ~」
安堵したように声を放った想汰は、俺の姿が見つけられずに、うろちょろと探し回っていたらしい。
「こいつら居なくても、オレが居たらそれでいいだろうが」
「そうじゃなくてっ」
不貞腐れたように声を放つ九良に、想汰は、ぶんぶんと頭を振るう。
すっと俺に瞳を向けた想汰は、辿々しく口を開いた。
「この度はお招きいただき、ありがとうございます」
ぺこりと綺麗に頭を下げる想汰に、きょとんとしてしまう。
確かに招待たのは、俺だ。
友人として、想汰に招待状を出し、未来の番である九良の出席も承諾した。
近衛家と九良家は、儚の一件で険悪になりかけたが、時間と共に蟠りも薄まっている。
「母さんに、ちゃんと挨拶するのよって言われたから」
ふんっと鼻を鳴らす想汰に、思わず笑いが零れた。
「てか、お前、なに首に巻いてんの?」
想汰の首には、ネクタイはなく、スーツには似つかわしくない若草色のスカーフが巻かれていた。
「これ? 黒羽製薬で開発した……何だっけ?」
想汰は、首に巻いているスカーフを摘まみながら、九良を見上げた。
「あぁ、【防散スカーフ】な。Ωのフェロモンが周りに飛散するのを防ぐんだと。因みにオレのこれは、【遮断マスク】」
九良は自分の口許にある灰色のマスクを指差した。
「Ωのフェロモンに惑わされねぇようにって。まだ、臨床段階らしいけど、それなりに効果はあるらしいぞ」
オレらまだ番じゃねぇからな…と、九良は冷ややかな視線を俺に向けた。
勢い任せに、神田を番にした俺を嗜めつつ、羨ましがっているのが、手に取るようにわかる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
211 / 224