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繋がった点と線
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周りの数人が、ガラスの割れる音に視線を向けた。
グラスを滑らせた懐里は、怯えるように幸理の影に隠れようとする。
「大丈夫ですか?」
近づいてきたボーイに、懐里は怯えた瞳を向けた。
懐里の外見をさらりと確認した幸理が、ボーイに声を返す。
「大丈夫だと思います。すいません、割っちゃって……」
「いえ。片付けますので、少し離れていただけますか?」
ボーイの言葉に、俺たちは、数歩離れた場所へと移動した。
様子のおかしい懐里に、幸理が声を掛けた。
「大丈夫だよ。グラスの1個くらい割れたって、怒られないって」
懐里を安心させるように、幸理は、笑顔を浮かべる。
グラスを割ったコトを怒られると心配しているような雰囲気ではなかった。
懐里の怯え方が、尋常じゃない。
幸理の顔から、次第に笑みが消えていく。
「運命の相手でも…見つけた?」
寂しそうに問う幸理に、懐里は、慌てて首を横に振るった。
「む、昔の…つ、がい………」
やっとのコトで、言葉を紡ぐ懐里に、幸理の顔が強張った。
きゅっと眉間に皺を寄せた幸理は、会話を遡り、その名を口にする。
「宇波、…が?」
幸理の影に隠れようと必死になる懐里。
幸理は、一気に怒りのボルテージを上げ、宇波に矛先を向けた。
「くっそ、あいつだったのか!」
懐里の怯えも、幸理の怒りも、瞬間的に合点がいった。
懐里が昔、引っ掛かったというろくでもないα。
それが、宇波だったのだろう。
怒りに任せ、宇波をぶちのめしに行こうと幸理が動く。
「待て待て待て」
後先考えずに、報復を図ろうとする幸理に、九良が待ったをかける。
キッと鋭い視線を向ける幸理に、九良は、呆れたような瞳を見せた。
「今お前が行ったら100%警察沙汰だろうが。この場、台無しにするつもりか? ってか、お前がお縄になったら、懐里どうすんの? 腹ん中のコ、犯罪者のコにしたくねぇだろう?」
ギリギリと鳴る音が俺の耳にも届きそうなほどに、幸理は奥歯を噛み締める。
「あいつ、黒羽の妹に手ぇ出して、兄貴にこっぴどくお仕置きされたらしいよ」
にたりとした笑みを浮かべた九良の言葉に、俺は、疑問符を浮かべた。
俺の視線に気づいた九良は、言葉を足す。
「ここに勃ったら激痛走るチップ入れられて、その辺の男に犯されて喘がされて、勃起させられて激痛に呻いてたわ……」
自分の股間を指差しながら言葉を紡いだ九良は、想像する痛みに、小馬鹿にするように顔を顰めた。
九良の横に立っている想汰もその姿を見ていたのか、思い出したように、ぶるりと震える。
黒羽家の黒い噂は、後を絶たない。
叩けば埃が出る出るレベルではなく、叩かなくても埃塗れだ。
でも、味方につけておく分には、黒羽家以上に頼りになる存在は居ない。
「αなのにあんだけ虐げられたら、プライド、ズタぼろだろ。本当、容赦ねぇのな。あれはもう悪さ出来ねぇだろうなぁ」
感慨深げに呟く九良に、幸理は胸の底に蠢く怒りを抑えるコトに、躍起になっていた。
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