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無慈悲な世界
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「俺は、運命に飲み込まれるしかないのか……?」
俯いたままに、独り言のように声を漏らす。
「妃羅の運命を、お前は直隠しにした。妃羅を守るためだったのは、わかってる。それなのに、妃羅には、別のアプローチで繋がった。運命は、それほどまでに強固…なんだよな……」
珍しく弱気な俺が、顔を出す。
遠ざけようと、足掻いても。
離れようと、暴れても。
結局は、見えない糸が引き寄せる。
運命を覆すコトは、叶わぬ夢、……なんだろうか。
「お前らしくねぇな」
ふっと嘲笑うような音を立てた黒羽は、言葉を繋いだ。
「運命だって、そこまで非情じゃない」
吐き捨てるように言い放つ黒羽に、瞳を向けた。
黒羽は、叱るような視線で俺を見やっていた。
「艶と妃羅が再会を果たしたのは、忘れていた記憶…、意識の奥底で、本能が会いたいと強く叫んでいたからだ」
黒羽の視線は、車のフロントガラスを通り越し、遠い過去を見つめるように、外へと向けられた。
「相手のΩ、冬峰がお前の存在を知らないなら、…冬峰が会いたいと願わなければ、お前も冬峰も結ばれたいと強く願っていないなら、そんな運命、覆せるだろ」
何の確信もなく、黒羽は自信に塗れた言葉を紡ぐ。
「運命なんてこの手で何とでもなるんだよ」
まるで、運命を握り潰すかのように、黒羽の手が、拳を象った。
「このマスクだって、このスカーフだって、お前らのようなヤツらの為に開発したんだ……」
黒羽は宙を睨みながら、忌々しげに言葉を紡いだ。
ふと頭を振るった黒羽は、真剣な眼差しを俺へと向けた。
「Ωは、発情期になれば、無自覚に他を誘惑し、どんなヤツに襲われようと、回避のしようがない。αだって、Ωに誘惑されれば、理性は仕事を放棄し、本能だけで動いてしまう。望まない行為が、そこにはある」
つらつらと語られる言葉は、この世の摂理。
「αとΩが番となるのが、当たり前なのかもしれない。でも、βだって、αやΩに恋してしまうこともある」
止められない感情が、存在する。
世の中に認められないとしても、愛する想いを簡単に捨てるコトなど出来やしない。
「それをすべて、理から外れるからと排除するのは、余りにも無慈悲じゃないか?」
同意を求めるように問う言葉。
その返答は、その通りだという肯定しか用意されていないように思えた。
するりと外れた黒羽の視線は、また、外へと流れた。
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