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阿吽の呼吸 < Side神田
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近衛が用意した部屋は、ツインルーム。
20畳程度の部屋に、セミダブルのベッド二つ、小さなテーブルを1人掛けソファーが挟むように2脚に置かれていた。
ベッドに座る懐里の正面に、しゃがみ込む幸理。
僕は、少し離れたソファーに腰を下ろした。
「もう、平気だよ」
不安げな瞳で様子を窺う幸理に、懐里は小さく笑みを見せる。
「平気じゃない。横になってて。大事な身体なんだからな」
肩に手をかけ、その身体を横たえようとする幸理に、懐里はくすくすと笑いながらも従う。
数個の枕を背に、ベッドへと弛く横たわった懐里が口を開く。
「過保護」
ぼそりと言葉を放った懐里に、幸理は、じとっとした瞳を向けた。
「過保護なくらいで丁度いいだろ」
柔らかく懐里の頭を撫でる幸理。
2人の雰囲気に、自然と笑みが零れた。
柔らかな雰囲気が充満する部屋に、扉が開く重い音が響いた。
「懐里さん、大丈夫?」
声と共に、部屋に入ってきたのは、近衛だ。
近衛の後を追うように、幸理の秘書である那須田も部屋に入ってくる。
懐里は、ベッドへと沈めていた身体を起こし、口角を上げた。
「大丈夫」
近衛は、そのまま懐里の傍へと歩み寄り、手にしていた物を差し出した。
「【防散スカーフ】。帝斗さんに用意してもらった」
急なコトに驚いているのか、受け取ろうとしない懐里に、近衛は、包装を解く。
ふわりと広げたスカーフを懐里の首へと巻きつけた。
「似合うじゃん」
近衛は、満足そうに、ニッとした笑みを浮かべた。
一連のやり取りを見ていた幸理が、口を開いた。
「……ちょっと、出てきても良いか?」
落ち着いた音で放たれた言葉は、その奥に消化しきれない怒りを隠していた。
「あいつシメに行くつもり?」
幸理の堪えきれない苛立ちが、近衛を睨めた。
睨みを効かせる幸理に、近衛は、飄々とした瞳を向ける。
「心配しなくても、潰すから。近衛家として、ぶっつぶす宣言しといたよ」
くっと片方の口角をあげ、意地の悪い笑みを浮かべる賢理に、幸理は、ふっと鼻から息を逃し、良くやったというように、その頭をぽんっと叩いた。
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