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第19話 危険信号
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まるで獲物を狙う獰猛な獣のような鋭い瞳が逃がして離さない。
――この男は危険だ。
頭がその信号を受け取ったが、しかしそれはもう遅い。
「見つけた」
すぐ目の前に迫った男が、呟く。
瞬間、強引に掴まれる腕。
「っ……」
「ひぁっ、!」
まるで身体に電流が走ったような、全身が疼いて止まらない。
「っ、はぁ……や、なに……」
男に掴まれたままの腕がビリビリと電流が流れたように熱い。
ドロリ。
何かが、マグマのように腹の奥から流れていく感覚。
膝からカクンと力が抜けて、倒れる寸前の体を男が支える。
助かった。
そう思えたらどれだけ良かっただろう。
実際は全然違う。
男と触れる密着面が増えたことで更に電流が身体を駆け上がる。
「あぁぁっ、ひっ、こわ、いぃ」
初めての感覚。
目の前がチカチカと視界が白く霞む。
しかし、すぐにぶわりと甘い香りが鼻孔を掠める。
怖いのに、どこか安心してしまう匂い。
「あー、くそ」
薄く開いた視界に男が眉間に皺を寄せている。
まるで、人を射殺してしまいそうなそんな鬼気迫る顔。
「ひ、ぅっ」
余りの恐ろしさに喉から情けない声が漏れる。
凄まじい程の色気と恐ろしさを漂わせる男は、口元だけでニヒルに笑った。
「ぶち犯してやりてぇ」
そんな言葉と共に顎を掬われ、男の美しく整った顔が近づいてくる。
「――は、」
息を呑んだその一瞬で唇を塞がれる。
同時に口の中にぬめりとした温かい何かが差し込まれる。
「ん゛んっ」
それが男の唇で口の中を蹂躙するのが舌なのだと頭のどこかで理解する。
ぴちゃぴちゃと厭らしい音を立てて。
歯列をその長い舌でなぞられ、巧みに舌を絡めとられる。
飲み込めない唾液すら男はジュルリと音を立てて舐めとる。
初めてのキスがこんな見ず知らずの男に奪われ、まるで食むような暴力的なキスに、今起こっていることが夢か現実かわからなくて、ぐらりと目眩がした。
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