アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
告白日和
-
卒業式が終わり静かになった放課後の教室で俺は今、3年間片思いをしていた先生に告白をしようとしている。
俺は自分でゆうのも何だが顔がいい方だと思う。だから中3まではそれなりに女の子と付き合っていた事もあったし普通に女の子が好きだった。でも高校の入学式で先生をみつけてから今までに無い強い感情が溢れてきて目が離せなかった。まあ、ようは一目惚れをした。
最初は男だしめちゃくちゃ戸惑った。でもそれはほんの一瞬。
先生と目が会った瞬間そんなこと吹き飛んでしまった。
そこからは気持ちが止まらなかった。底なし沼に落ちるようにどんどん好きになっていった。
先生の名前は東堂賢治。普段呼ぶ時はけんちゃんって言ってるけど、心の中では賢治さんと呼んでいるのは秘密だ。
歳は34で俺とは一回り近く歳が離れている。
賢治さんは凄く整った顔をしていて、女子生徒からは密かな人気があった。勿論、男子生徒からも話しやすいと慕われていた。
担当科目は数学でとても分かりやすいと評判だった。それも人気の理由だと思う。
声は少し低め。髪と目は焦げ茶色では垂れ目。あの優しい目にみられるのは堪らなかった。なんか、わー!って叫びたくなる感じ。
そうやって沢山の事を知っていってもっともっと惹かれていった。
賢治さんに名前を呼ばれたり褒められただけでその日の心の中はお祭り騒ぎ。頭を撫でられた日なんて嬉しすぎて死ぬかと思ったくらい。
賢治さんの持ってるものと同じものを探して使ったり遠くから姿を隠し撮りしてきゃあきゃあ騒いだり、なんて事もした。
自分でもやり過ぎ感は否めない。やばいやつなのは自覚してる。正直友達が同じ事をしていたらドン引きすると思う。
これじゃストーカーじゃんか、と思ってはいた。
恋は盲目とはよく言ったもんだ。
でもどうしようもない位好きなんだからしょうがないじゃないか。なんて言い訳をしている。
今振り返ってみても賢治さんが中心の生活だったなーって思う。
でも告白する気は無かった。
だけど高校卒業を目前にして思った。
卒業すれば俺と賢治さんの繋がりは無くなる。そしたらきっと、俺の存在はどんどん薄れて消えてっちゃうんだろうな、って。
小説の主人公みたいにそこで綺麗に終われたらよかったんだろうけど3年間の拗らせた片思いはそれを許せなくて賢治さんの中から俺が消えないように悪足掻きをしてやろうと思った。
担当していたクラスの男から告白なんてされるとも思ってないだろうから嫌でも記憶に残るだろ。
きっと凄く困るだろうし、気持ち悪がるとも思う。
それでもいい。それでもいいから、少しだけ、どんな形でもいいから俺の存在を賢治さんの中に残したかった。
ほんと自己中でやばいやつだよね。
この方法だと賢治さんの記憶には嫌な日で残るだろうからそれは申し訳ないと思う。
まあ、今更どうこうゆっても言い訳にしかならない。
今俺の目の前に賢治さんが居て、俺の言葉を待っているのは変わらないのだから。
「悠介?どうしたんだ」
クラスにたまたま同じ名字の奴がいたから俺の事名前で呼んでくれてたよね。
俺、賢治さんの声で名前呼ばれるのすげー好きだったよ。
「最後にけんちゃんに話があって」
「話?」
「そ!実はさ……」
やっぱりいざ目の前にするとちょっと怖いな。
「実は俺、ずっとけんちゃんの事好きだったんだ」
「え……」
まさか告白だとは思ってなかっただろうなー。
賢治さんは目を大きく開いて、口も閉じないまま固まっていた。その姿はちょっと面白くて少し笑ってしまった。
「好きって」
「恋愛の好き。入学式の時に一目惚れしたんだ」
「ずーと好きだったんだけど言えなかったから、卒業は良い機会かなって思ってさ」
「そう、だったのか……」
「うん」
賢治さんと目を合わせるのが怖くなって目線を下げた。
賢治さんが何かを言う前に言葉を繋げた。
わざと声を明るくして。
「ごめんな!こんな困らせるようなこといって。本当はゆうつもり無かったんだけどさ」
「けんちゃんの事好きすぎて溢れちゃった!」
なんて笑ってみた。
あー、賢治さんめっちゃ困ってる。そりゃそうだよね……。
あー、くそ!なに泣きそうになってんだよ!これじゃ賢治さんをもっと困らせるだけだってのに!
今にも溢れ出しそうな涙を隠す為に下を向き矢継ぎ早に話した。
せめてこの教室を出るまでは泣くまいと。
「ごめん!話はこれだけ!」
「ほんと、俺の自己満だから。付き合わせちゃってごめん」
「じゃあ俺はこれで!」
声が震えてしまった。これ以上はもう無理。そう思い荷物を引っ掴んで立ち去ろうとした
「待て」
でも腕を捕まれ止められた。俺は下を向いたままだったから賢治さんの表情は分からなかったけど手には力が込められていて少し痛かった。
「何?」
「何じゃない。返事を聞く前に言い逃げか?」
「返事なんて要らないよ。分かりきってるじゃん」
「そんなこと」
「そうなの!いいから、この手話して!」
はあ、とため息をつく賢治さんの次の言葉が怖かった。
お願い。分かってる。分かってるから言わないで……。聞きたくない。
「俺もお前が好きだ」
「ほら、だから言って……ん?」
「待って、今なんて言った」
「俺もお前が好きだ」
「ん?んん?」
え、まてまてまて。待て。
きっと聞き間違いだろうと賢治さんに顔を向けもう一度聞き返す。
「ごめん、もっかい言って」
「だから、俺もお前が好きだって言ってんだよ」
何度も言わすな、なんて言いながら賢治さんは俺の頭を小突く。
あまりの驚きに出かけていた涙が引っ込んでしまう。
「え、好き?何で?」
「何でって何だよ。」
「いやだって俺男だよ?あれ、俺女に見えてんの?」
「んなわけないだろ、馬鹿」
「え、てか指輪は?」
「指輪?ああ、これか。フェイクだ」
「フェイク?」
え?フェイクって何?どゆこと?
頭が追い付かずパニック状態だ。
「俺実はゲイでな。その事を隠すのに既婚者って事にしておくのが楽だったんだ。だからこれだ」
そういって指輪を付けた手をひらひらさせている。
賢治さんが俺の事を好き……しかもゲイで独身……
言われた言葉達をのみこもうとするも頭はパニック状態だ。
「そ、う、なんだ。へー」
「へーって。反応薄いな」
「これは……ほら、驚き過ぎて逆に無、みたいな」
「何だそれ」
ふふ、ととても優しく笑っている。
「あの、えっと。その、ちなみに……けんちゃんは俺の事いつから……」
「お前が入学した時から」
つまりそれは3年間ずっと俺を想っていてくれたとゆうことで
どうしよ。嬉し過ぎて……。
てか3年間も両片思いかよ!!もっと早く言っとくんだった!!
くそー!
体が沸騰したように熱くなってきた。きっと今、俺の顔は真っ赤なんだろう。
色んな感情が押し寄せて涙が溢れてきた。
「さて、それで?俺もお前が好き。しかもゲイだ。指輪もただの偽物。今日卒業したから生徒でも無い。これでしがらみみたいなもんは全部無くなったな。
いやまあ、法律的にはまだあれだが……まあおいとくとして」
「悠介、どうしたい?」
そういって今度は悪戯っ子のような顔で笑いながら零れ落ちる涙を拭ってくれる。
その質問に対する答えは勿論一つだ。
「俺、けんちゃんの恋人になりたい」
そう言うと賢治さんは満足そうに笑い
「これからは生徒じゃなく恋人として可愛がってやる。よろしくな、悠介」
言葉と共に優しいキスをくれた。
END
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 1