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片想いの時間 ~最初の一歩4~
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アパートに着いても繋ぐ手は離さない
手を引くように部屋に入り上がらせる。
「…誰にやられた…
言っておくけど重症だぞ
分かってて警察行かないとか言ってんのか?」
座らせてやりゃぁいいのに靴も脱がずに問いただす。
「いいんだ…慣れてるから…
ごめん…会いたく…なった」
「…………」
「ごめん…」
光の言葉に察しがついた。
ありえないとも思った。
それと同時に後悔が押し寄せる。
「………なんだっていい」
「え…?」
光が生唾を飲む。
今度こそ靴を脱がせ
手を引いてソファーに座らせた。
暗かった部屋に明かりをつけると眩しさで細めになった目も
光の痣を見れば、その酷さに思わず眩しさに慣れないまま目を見開いてしまう
よく見ると切り傷もあってその血が服を汚したんだと分かる。
隣に腰を下ろし直ぐさま傷の手当てをしてやりたいのに手が震えて止まる。
光が見えなくて顔まで背けて下を向く。
「拓…どうしたの…?」
どうしたはお前だよ。
好きな奴がこんな悲惨な状態で自分に会いたくなったなんて言われたら…
もっと早く着信に気づけばよかった。
バイトを定時に上がれば良かった。
どうしたら守れた?
最初から無理に聞き出せばよかった。
最初から腕の傷を見せろとひっぺがえせばよかった。
守れたはずだ。
いくつもヒントはあった。
東京ランド行ったことないことも
花火すらしたことないのも
男にしては小さくて細過ぎたことも
傷を見られるだけでパニックに起こすことも
人肌恋しそうに擦り寄ってくることも…
慣れてるなんてそんなの決まってる。
「傷…あの…オレ…」
「いつからだ…」
「……」
「いつから?」
「……小学生くらい…から…」
「…それでも帰ってたのか…」
「…」
「長袖なんか着て…そっちも痛いだろ?」
「…」
上着の上から光の腕を摩った。
ビクついた腕に今度こそ痛みで震えたんだと分かった。
ゆっくりと袖口に手を掛けても
光は嫌がることもしないでジッと俺の手を見つめる。
「火傷…増えたのか…」
「…」
「そうか…」
否定をしない光の沈黙は肯定だ。
この袖を捲ればきっと全部を知ることになる。
俺も後には引けない。
引く気もない。
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