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恋人の時間 ~一緒の空間~
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ピピッと電子音が鳴る。
脇に挟んでいた体温計をみると37.8°を指していた。
やっぱりいつもと同じ…
ただ違うのは手当された身体と
肌をサラサラと擦る布団
遠くで拓也のシャワーを浴びる音
安心のため息が出たのは初めてだった。
手当早々にベッドに入れられ先に寝とけと拓也はシャワーを浴びに行ってしまった。
これからどうなるんだろう
きっと拓也は通報する。
幼い頃とは違って今なら分かる。
警察に連絡すればどうなるか。
きっと波乱なことが起きるに違いなかった。
今は自分が逃げ出せれば平和な日常だ。
学校行ってバイト行って遊んで…
だから今はただ逃げたかった。
自分の中で散々やってきたからどうせ…という気持ちもあった。
明日の学校は行けない。
でも腫れが引くまで休むには長すぎる。
何か言い訳を考えなくちゃ…
あ、バイトにも連絡しなきゃ
熱が引いたら帰ろう
逃げ出したオレをあの人はどうするか…
休まない程度にしてもらはないと…
熱にうかされてきてるのか
今は何も考えたくないのに
考えなくてはいけないこと、考えてしまうことが思いついては次々と浮かんでくる。
ダルくなっていく身体と嫌悪感からの不安で夏掛けの布団を頭から被り握り返した。
「大丈夫か?」
「あ…熱…」
まだシャワーを浴びていると思っていた拓也に唐突に声をかけられ
もう誤魔化さなくていいのに自然と悟られないようにしてしまった。
シャワーから上がってきた拓也に顔も出さずに返答をした。
「頭冷やさなくて平気?」
「大丈夫…」
「何かあったら声掛けろよ?」
布団の上から撫でられたのが分かった。
パチンと電気のスイッチが聞こえたと同時に部屋が暗くなったのが布団の中でも分かった。
チラリと布団をめくると
テレビ横にある背の高いスタンドライトのオレンジ色の光だけが灯っていて
拓也はソファーに腰を下ろしていた。
「寝ないの?」
「ん?もう少ししたら寝るよ。」
拓也の声が心なしか優しくて
なんだか勿体無くて寝れない。
自分が弱っていることにつけ込んで甘えたくなる。
「こっち…来て?」
「寝れないか?」
座ったばかりの拓也がベッドの横に来てくれて腰をおとす。
オレも布団から顔を出すと拓也が枕もとに身を寄せてくれた。
「学校休むだろ?俺も休むよ」
「ありがとう…でも、大丈夫だから行って?
寝不足にして申し訳ないけど…」
「……」
「大丈夫だよ」
「分かった」
拓也が前髪を優しく触れてきた。
こそばゆくて小さく笑うと拓也もやっと笑ってくれた。
嬉しさもあったけどやっぱり流れた時の罪悪感はあったからホッとする。
さっきまでの嫌な気持ちが消える。
安心感と気持ち良さでうっとりと目を閉じるとオレはそのまま眠ってしまった。
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