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インパクト
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今時の拡散力はヤバい。
テルミーライは一晩待たずにランキングのトップに躍り出た。
CDも何もない。
裕太のアカペラの数小節だけ。
あのときカメラを向けていた社、ICレコーダーで録ってた社だけが流せた。
タイトルのテルミーライなんて誰も知らない。
みんな『ダメ』だとか『ゆうたやん』とか呼んでる。
そのくらいインパクトがあったらしかった。
俺自身も取り沙汰された。
マムンに回れといわれて回らなかったやつ。
それがもっぱらのあだ名で、悠斗と呼んで貰えるまではかなりなタイムラグを要した。
発売までの質問責め、発売後も質問責め。
レインは一躍時代の寵児になってしまった。
セカンドシングルも初登場一位。
サードも。
当時いちばん勢いのあったソニック頭越しで行くから、ソニックのファンにはひどく嫌われたけど、その子らも、俺たちが他の事務所のアイドルファンにくさされてると庇ってくれたりする。
ファンどうしが仲良くなると不思議なもので、ソニックも俺たちを気にかけてくれて、俺らは何とかぎりぎりのところで事務所の人間関係を切り抜けていたのだった。
でも突然大ブレイクだから、きつい目で見る人はいる。
裕太はいいのだ代償も払ってるし、まごうかたない美形だ。
でも俺は…
寮の部屋のドアはベコベコ。
ものすごい高いとこまで靴あとついてる。
無言電話。
寿司出前。
ピザ30枚届いたときはどうしていいかわからなくなって、俺はその場に屈み込んでしまった。
来てくれたのはKYOTOだった。
“緊急特番、間違ってピザ30枚きたら君はどうする!!”
『オイデマセ』史上最高視聴率となったあの回には、実はそんな裏事情があったのだ。
でもそんなのは気にならなかった。
俺にされてる嫌がらせなんて、小学生レベルの稚拙なもんだ。
美しいがゆえに、マムンの寵愛を受けているが故に、裕太はいつも孤独だった。
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