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お買い物
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光忠「今日の夕飯は麻婆豆腐とニラ玉と春菊のおひたしだから、この材料を買ってきてね?あまったお金はアイスにでも使っていいよ」
「はーい!光忠お母さん太っ腹♪」
今日はここに来て初めてのお使いだ。
朝から書類整理を終わらせ、暇になったので光忠に相談したところ、お使いという仕事を任せられた。
腰には昨日鍛刀した刀・日光一文字をさげて外いきの袴を着ている。
光忠「ははは。主君。僕は『お母さん』じゃないよ?」
「いででででででで!!ご、ごめんなさい!二度と言いません!!」
燭台切は「お母さん」呼びが嫌なのか、俺の頭を掴んでその手に力を入れてきた。
指が長く丁度こめかみ部分にも入ってきたので、俺の頭は悲鳴をあげた。いや、俺自身も悲鳴をあげた。
?「遊んでないで行きますよ」
?「今日は‥いい天気、ですね」
「ん?あ!ピンク髪の人!」
知らない声が聞こえたので誰かと思えば、後ろに初日に見たピンク髪の刀剣男士と、薄い水色髪の刀剣男士がいた。どちらも長髪だ。
「体は大丈夫なのか?えっと‥‥ごめん。2人の名前分からないんだ」
宗三「……宗三左文字と言います。貴方も、天下人の象徴を侍らせたいのですか……?」
江雪「……江雪左文字と申します。戦いが、この世から消える日はあるのでしょうか……?」
「宗三に江雪か‥‥‥‥2人ともなんでそんなに暗いの?」
2人と握手を交わしてそう聞いてみると、2人は顔を見合わせて首をかしげた。
宗三「そんなに僕らは暗いでしょうか。江雪兄様」
江雪「‥‥分かりません」
「え」[ガクッ]
どうやら自覚のない2人だったらしく、俺は古典的な感じにズッコケた。
[ツンツン]
2人を見ている俺は袴を引っ張られ、誰だろうと下を見ると、そこには小夜がいた。
「小夜!今日はどうした?今日も柿、一緒に食べるのか?残念だけど、俺今から買い物いかなきゃならないんだ。また今度な」
小夜は、俺が元気がない時にはいつも柿を持って来てくれる。
そして、その柿は俺が向いて小夜と一緒に食べるのだ。
小夜「違う」[フルフル]
だが、俺の予想は違うらしく、小夜は俺の袴を掴んだまま首を横に振った。
「?」
俺はわけが分からず、首をかしげた。
そう言えば、宗三も江雪も小夜も。なぜここに居るのだろうか。
光忠「あ、伝え忘れてたね。君は初めてのお使いだろ?迷子にならないように、今日は左文字兄弟が護衛としてついて行くことになってるんだ」
「護衛!?そういうの先に言えよ!」
初耳の「護衛」という言葉に、俺はツッコミを抑えることが出来なかった。
「‥‥‥よろしくお願いします 」
江雪「‥‥はい」
宗三「勝手な行動はしないでくださいね?」
小夜「‥‥‥うん」
とりあえず挨拶すると、帰ってきたのは人付き合いが苦手な人などがしそうな返事だった。
大丈夫か?これ。
早々に不安を隠せない俺は、苦笑いをして顔を上げた。
-------------------商店街-------------------
「うわぁー!すげぇー!」
商店街は刀達に馴染みやすいようにと、江戸や戦国時代らへんの風景にされている。
さらに、この城下町は他の本丸の審神者や刀剣男士も来るので、色々な様子が見て取れた。
女性審神者が短刀と戯れながら歩く姿。
男性審神者が長谷部に小言を受けている姿。
どの本丸の刀も、とても幸せそうな感じの笑顔を浮かべており、見ているこちらも幸せになってくる。
「ん?小夜?」
他の本丸の刀剣男士達を見ていると、小夜が俺の手を握ってきた。
何かあったのかと目線を合わせると、小夜が俺を不安気な顔で見つめてきた。
「小夜?どうかし──」
小夜「──あなたは‥‥僕達じゃない方が‥よかった?」
「??どういうことだ?江雪、宗三。どういう‥‥‥‥あ」
どうやら他の本丸の刀剣男士を見ていた顔が、左文字兄弟には俺が羨ましそうに見ていたように見えたのだろう。
まぁ、そう考えるのも不思議ではないのかもしれない。
普通、審神者は1から本丸を作っていく。
初期刀を貰い、初鍛刀を行い、初出陣を行う。
そこからは好きなように鍛刀し、好きなように本丸を作る。
だが、俺は前審神者の本丸を「奪い取った」。
だから、今ここにいる左文字兄弟は俺が望んで顕現してくれた訳ではない。
望んで顕現した訳でもないということは、いつ姿を消されても文句を言えないという事だ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥3人ともこっち」
俺は小夜を抱き上げ、江雪の手を引いて近くの茶屋に入る。
思った通り、宗三はちゃんと着いてきてくれたので、手を引かなくてもよかった。
「すみませーん!お茶と団子3人分お願いしまーす!」
店員「はーい!」
店員に注文をしてから、俺は小夜を降ろして左文字兄弟に向き直る。
「‥‥‥江雪左文字!宗三左文字!小夜左文字!そこに座れ!」
江雪「‥‥はい」
宗三「??」
小夜「‥‥‥」
返事をしてくれたのは江雪だけだったが、3人はちゃんと椅子に座ってくれた。
それを見届けてから、俺は3人を置いて走り出した。
江雪「!?」
小夜「!?!?」
宗三「主!?!?!?」
店員「ご注文の団子3人前でーす!」
丁度よく店員が団子を持ってきてくれて、左文字兄弟は俺を追いたいのだが、頼んだのに食べずに出るのも失礼という狭間でオロオロとしている状況が出来上がった。
「おっちゃん!これ!」
店員「あいよ!」
--------------------茶屋--------------------
宗三「‥‥‥置いていかれましたね」
宗三達はあの後。すぐに店先に出たがもうそこに黎音の姿はなく。人混みがあるだけだった。
3人は置いていかれた事実と不安な感情で、気分が沈んで団子の気分ではなかった。
小夜「‥‥‥‥あの時と‥同じ」
小夜は目の前にある団子を見つめながら、そう呟いた。
それを聞いた江雪と宗三は、さらに沈んでしまい、もうお通夜状態になってしまった。
江雪「‥‥‥新たな主は、何を考えているのでしょうか」
江雪の頭には、自分の手を引く時の黎音の顔が浮かんでいた。
泣きそうで、悔しそうで、でもどうすることも出来ないような顔。
その顔は、抱き上げられて顔が後ろにあった小夜や自分の後ろを歩いていた宗三には見えていなかったであろう顔。
その顔を思い出すと、胸のあたりがモヤモヤしてしょうがない江雪は、盛大にため息をついた。
小夜「‥‥‥‥‥帰ってくるかな」
宗三「さぁ?もしかしたら、僕らを置いて現世に帰ってしまったのかもしれません」
江雪「‥‥‥」
3人は、とりあえず目の前の団子を消化することにすることにした。
------------------数十分後------------------
「あ!良かった!まだいた!」
小夜「!!」
俺は、用事を済ませて走って戻ってきたので、汗だくだが、3人は茶屋の中で待っていたので汗1つかいていない。
「よかった〜!もし帰ってたらどうしようかと思ってさ。急いで買ってき──」
小夜「──!!」[ドンッ]
買ってきたものを懐から出そうとしたら、急に小夜が突撃してきた。
小夜を受け止めるだけの筋肉は持ち合わせていたので、難なく小夜を受け止めた。
「おっと。どうした?小夜。兄ちゃん達から意地悪されたか?」
微妙に震えているのが伝わってきたので、俺は小夜を抱き上げて、その背中をトントンと叩いた。
小夜を宥めながら席に近づくと、江雪も宗三も下を向いて顔を上げてくれなかった。
宗三「‥‥‥どこに行っていたのですか?」
宗三の声は先ほどよりワントーンと言わず、ツートーンほど下がっているように聞こえ、俺は思わず後ろに一歩下がってしまった。
「!?」
江雪「‥‥‥どこに、行くのですか?」
後ろに1歩下がっただけなのに、俺の背中は江雪に当たった。
先程まで江雪は椅子に座っていたと思っていたのだが、どうやらいつの間にか移動したらしく、俺は江雪に見下ろされる形になった。
江雪もツートーンほど声の高さが下がっている気がするのは、俺の勘違いと願いたい。
「あ、いや。その‥‥‥怒ってる?」
江宗「はい」
「ですよね〜」
試しに怒っているかと聞いてみると、2人は綺麗にハモって「はい」と言った。
俺はそれに苦笑いしか返すことが出来なかった。
多分、今何を言っても言い訳として取られてしまうだろう。
そうなると、俺の脱走は無意味なことになってしまうため、俺はどうしようと思考回路が迷走し始めた。
「えっと‥‥‥とりあえず走って喉乾いたから、注文していい?」
宗三「どうぞ」
喉が渇いていたのは本当なので、宗三に許しを貰えた時は嬉しかった。
だが、宗三が手で指したのは、宗三の隣で向かいは江雪の壁側の席だった。
逃げ道ナッシング!?完璧に檻の中!?
「や、やった〜」
心の中では怖かったが、俺は喜ぶふりをして其の席に座った。
小夜は俺の服を掴んで離そうとしないので、そのままにしておくことにした。
しばらくすると、注文した団子とお茶が来たので、俺はお茶を飲み団子を一個食べた。
「うっま!この団子美味しいね!ね!2人とも!」
宗三「そうですか?よかったですね。僕らは貴方が僕の忠告も聞かず、1人で勝手な行動をして出ていってしまったので、団子を味わう余裕はありませんでした」
「うっ!ゴホゴホ!」
俺は団子を喉に詰まらせてしまい、盛大に噎せた。
確かに、本丸の敷地を出る前に宗三に忠告された。『勝手な行動はしないでくださいね?』と。
それを破ったのは俺だ。
他審「君。あんまり黙っていない方がいいよ?」
「え?」
声をかけてきたのは、後ろの席の審神者だった。
連れは蜻蛉切を連れている。
他審「その子達は、君がいなくなってからとても寂しそうにしてたからね。何か理由があったのなら早く言ってあげるといい」
「え?は?」
他審「それじゃ」
言いたいことだけ言って、その審神者は茶屋を出ていってしまった。
とりあえず、俺は先輩審神者である人の言葉を聞き入れることにした。
「‥‥‥‥ごめんなさい!」
宗三「‥‥理由は?」
「俺が他の本丸の刀剣男士を見てたのが原因で、3人を不安にさせたと思ったから、これを買いに行っていました!!」
俺は懐から薄水色・ピンク・青と、3人の髪色と同じ色の小物入れを出した。
江雪「‥‥‥これは?」
江雪が自分の髪色と同じ色の小物入れを手に取り、中身を確認する。
「えっと、江雪には紐で出来た付け外し可能なネックレスだよ。江雪が少しでも明るくなるよにって、明るめの水色にしてみた。ちなみにそれと色違いのやつを俺は今付けてる。ほら」
俺は首元を出して江雪に見せる。
そこには、江雪とデザインは一緒だが、色が赤・緑・黄色の石が上から純にあるネックレスが存在している。
江雪「‥‥‥似合いますか?」
「うん!似合ってる!」
江雪はすぐに小物入れからネックレスを出し、自分の首に通した。
江雪は水色だからけになってしまうが、どうしても水色しか浮かばなかったのは、俺のセンスの問題なのだが、やはり美形。そこは何をつけても似合っていた。
宗三「‥‥これは?」
宗三もそれを見てすぐに自分の髪色と同じ小物入れを手に取り、俺に聞いてくる。
「宗三にもネックレス。と言っても、皆ネックレスなんだけどね。ほら、小夜もつけてみてよ。せっかく買ってきたんだからさ」
小夜の体を前向きにし、青色の小物入れに入っているネックレスを小夜の首に下げた。
小夜「‥‥どう?」
「似合う似合う!あ、宗三も似合ってるじゃんか!」
宗三「ついでのように言われても、嬉しくありません」
小夜にネックレスを付けてあげている最中に、宗三もネックレスを付けており、褒めると、宗三は満更でもなさそうにネックレスをいじっている。
「さ!買い物済ましちゃおっか!」
小夜「‥‥‥お金‥足りるの?」
やっと皆笑顔になったところで席を立つと、小夜がそう心配してきた。
「‥‥‥‥‥大丈夫!」
俺は一瞬固まったが、3人のアクセは自分のお金で買ったものであり、お使いのお金は一切使っていないことを思い出した。
--------------------本丸--------------------
全刀「「「「「「「主(さん(さま」」」」」」」
「うぉーい!ど、どうした!!」
買い物から帰り、ご飯も食べ終えて部屋でゆっくりしていると、刀剣男士全員が切羽詰まった顔で勢いよく部屋に入ってきた。
その理由が左文字兄弟が今日送られたネックレスが自分も欲しいというもので、俺が人数分のものを買うお金もなく、自分で作ることのなったのは、また別の話。
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