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起首3
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結局紅は帰ってこなかった。
それに、帰ってこなかったのは紅だけではなかった。
雨音も家を飛び出したまま連絡無しに外泊。
2時間2500円で借りた稽古場に、空元気を見せる音葉と二人で向かった。
稽古場の扉を開けば、そこにはちゃんと雨音の姿があって一先ず安心した。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよう!」
「紅は?」
「居ますよ。」
雨音はなぜかいつにも増して不機嫌で、紅になにかあったのだと容易に察する事ができる。
「はい、集まれー」
どこからか姿を現した紅が、16人のメンバーを集める。
ホワイトボードの前に立った紅は、手招きをして、誰かを呼んだ。
それに応え、紅の隣には高身長で、目鼻立ちのしっかりした男が並んだ。
「今日から副長をしてもらう。紫音だ。よろしくな」
爽やかでいいやつ。
そんなイメージがピッタリな男。
なのに雨音はあからさまに敵意を剥き出しにし、鋭く睨み付ける。
「急だが、紫音には俺のサポートをしてもらう事になった。演技指導だったり、ここの運営だったり」
紅のサポートは今までずっと音葉がやってきた。
それなのに、何の相談も無しに入ってきたばかりの奴が?
ありえない。
「副団長……?」
「でも音葉さんが」
後ろの方に座る団員からも疑問の声があがる。
「紫音は実家が大衆演劇をやってる。芸から運営まで、この中の誰よりも知っている。だから任せる。理由はそれだけだ」
紅は直接は口にしなかったが、「何か文句はあるか」と言いたげな様子で、団員を威圧する。
音葉はただ下を向いて、湧き出る負の感情に震えながら耐えている。
雨音は今にも紫音になぐりかかりそうな剣幕で、紫音にがんをとばす。
「まぁ気に入らないだろうけど、そう言うことなんで。よろしく」
重い空気が漂う稽古場に、紫音の無駄に明るい声が響いた。
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